
肩こりは「筋肉」だけじゃない|自律神経×整体×鍼灸の科学的根拠
「マッサージしてもすぐ戻る」「頭痛や眠りの浅さも一緒に出る」――肩こりの悩みは、単なる筋肉疲労だけでは説明しきれないことがあります。実は肩こり(いわゆるカタコリ)は、筋緊張・血流・痛みの感じ方に加えて、自律神経(交感神経・副交感神経)のバランスと結びついて起こりやすい症状です。この記事では、整体や鍼灸が「どこに」「どう効くのか」を、研究知見を踏まえて整理します。
肩こりがつらくなるメカニズム(自律神経の視点)
ストレスや睡眠不足、長時間の同一姿勢が続くと、交感神経が優位になりやすくなります。交感神経が優位になると、筋肉は無意識にこわばり、呼吸が浅くなり、血流の調整も偏りがちです。その結果、首〜肩まわりの筋肉が「休めない状態」になり、だるさ・重さ・痛みが出やすくなります。
さらに、痛みが続くと脳・神経系が敏感になり、同じ刺激でも痛く感じやすくなる(痛みの増幅)ことがあります。つまり肩こりは、姿勢や筋肉だけでなく、自律神経・ストレス反応・痛みの調整が絡む“複合問題”になりやすいのです。
鍼灸が肩こりに効くと考えられる理由(研究から)
1)痛みと筋緊張を下げる:カタコリを対象にした臨床研究
日本の「カタコリ(首・肩のこり)」を対象とした研究では、鍼治療の効果を検討した報告があります。カタコリは日本特有の訴えとしても知られ、首肩の不快感・痛み・重だるさが中心です。こうした領域で、鍼が症状を軽減しうる可能性が示されています(臨床研究・試験の報告)。
2)トリガーポイントへの鍼:痛みの強い“コリの芯”を狙う発想
首・肩の痛み(カタコリ)に対して、トリガーポイント鍼が痛みの軽減や労働生産性の改善につながったとする報告もあります。ポイントは「ただ揉む」よりも、痛みを出している筋の過緊張部位(トリガーポイント)を適切に評価して介入することです。もちろん個人差はありますが、反応が出やすい方では“戻りにくさ”につながることもあります。
3)自律神経への作用:副交感神経(リラックス側)を後押しする可能性
鍼刺激が自律神経に与える影響として、心拍変動(HRV)などを用いた研究があり、副交感神経トーンを高める方向の変化が示唆されたメタ解析もあります。研究の質やばらつきには注意が必要ですが、「リラックスしにくい」「寝つきが悪い」「緊張が抜けない」タイプの肩こりに対して、鍼灸を組み込む合理性の一つになります。
整体が肩こりに役立つ理由(研究から)
整体(徒手療法)は、首〜肩甲帯の可動域や筋の緊張、姿勢のクセにアプローチしやすいのが強みです。首の痛み領域では、徒手療法(手技療法)が広く用いられており、複数のレビューで一定の有用性が検討されています。重要なのは「強い矯正」ではなく、状態に合わせて安全性と再現性を担保しながら、可動性と筋の協調を取り戻すことです。
また、整体は“その場で緩む”だけでなく、呼吸・胸郭・肩甲骨の連動を整えることで、日常姿勢に戻ったときの負担を減らしやすくなります。肩こりが慢性化している方ほど、局所(肩)だけでなく、首・胸郭・骨盤などの連動を評価する意義があります。
杉本接骨鍼灸院の考え方:肩こりを「再発しにくく」
当院では、肩こりを「肩だけの問題」と決めつけず、次の3つをセットで考えます。
- 局所:首肩の筋緊張、トリガーポイント、血流・滑走不全
- 連動:肩甲骨・胸郭・呼吸・姿勢(デスクワーク姿勢など)
- 自律神経:睡眠、ストレス反応、緊張が抜けない体質傾向
鍼灸で“緊張スイッチ”を落とし、整体で“動きのクセ”を整え、日常のセルフケア(呼吸・姿勢・軽い運動)で“戻り”を減らす。これが、慢性肩こりに対して現実的で再現性の高い道筋だと考えています。
注意点:危険サインがある場合は医療機関へ
肩こりに似た症状でも、強いしびれ・筋力低下、手の細かい動きが落ちる、発熱や強い炎症、胸痛や息苦しさが同時に出る場合などは、別の原因が隠れていることがあります。そうした場合は、まず医療機関での評価が優先です。整体・鍼灸は、診断の代わりではなく、評価と連携の上で活用するのが安全です。
参考文献(研究・レビュー)
- Takakura N, et al. “Acupuncture for Japanese Katakori (Chronic Neck Pain)” (2023) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10745119/
- Minakawa Y, et al. “Trigger point acupuncture on chronic neck and shoulder pain (katakori)” (2024) https://academic.oup.com/joh/article/66/1/uiad016/7473693
- Fang J, et al. “Durable Effect of Acupuncture for Chronic Neck Pain: Systematic Review and Meta-analysis” (2024) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11416387/
- Hamvas S, et al. “Acupuncture increases parasympathetic tone… (HRV meta-analysis)” (2023) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36494036/
- Reynolds B, et al. “Manual physical therapy for neck disorders: an umbrella review” (2024) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39607420/
