突発性難聴は、突然の聴力低下や耳鳴りを伴う疾患で、その原因は不明です。
治療が遅れると聴力の回復が難しくなることが多いため、早期の対応が重要です。
本記事では、30代男性の突発性難聴の症例報告と鍼灸治療の効果について紹介します。
突発性難聴の発症と初期治療
発症の経緯
患者は37歳の男性、会社員。
昨年夏ごろ、夕飯を作っている際に突然の耳鳴りを感じ、調理後にテレビの音が聞こえなくなったことに気づきました。
眩暈や頭痛、発熱感はなく、翌朝も難聴と耳鳴りが続きました。
翌日、近くの耳鼻咽喉科で検査をしましたが異常はありませんでした。
その後、総合病院で突発性難聴の診断を受け、医師からはステロイド治療が提案され、1/3の患者は聴力が回復しない可能性があると告げられました。
その総合病院に入院し、6日間のステロイド点滴とビタミンB12製剤の治療を受けましたが、退院時も症状の改善は限定的でした。
鍼灸治療の開始
西洋医学的治療に加え、発症から約3週間後の9月中頃から当院にて鍼灸治療を開始。
治療は、主に頭部、頸部、耳周りなどの罹患部の血流改善を目的とし、特定の圧痛点に対して鍼灸治療を行いました。
初回の治療では耳周囲に温かさを感じ、血流の改善を実感でき、リラックスしたとのこと。
自宅での食事とストレッチ、入浴法などを伝えて、週に1度の程度の通院計画を立てた。
治療経過と結果
1~4回目の治療(週1~2回程度の間隔で通院)
1回目
施術治療後、患者は耳周囲の温かさを感じ、その効果が長時間持続したものの、耳鳴りに変化はなし
聴宮、翳風、完骨、天柱、風池に鍼を刺入
2回目
2回目の治療後も同様の効果が見られたものの、耳鳴りには変化はなし。
自分の声がピリピリと響くようになったとの自覚。
3、4回目
3回目の治療後には、通勤時の駅や電車内のアナウンスが少し聞こえやすくなったとのこと。
4回目の治療後には電話のベル音がはっきりと聞こえるようになりました。
5~8回目の治療(週1程度の間隔で通院)
5回目
5回目の治療後には、頭位を変えた際のふらつきがなくなり、右耳の声に対する響きも変わってきました。
6回目
6回目の治療後には、ウェーバー試験での偏位がなくなり、7回目の治療後には倦怠感もなく、熟睡感が増しました。
7、8回目
8回目の治療後には、聴力検査で低音領域がほぼ正常に戻り、中高音領域も改善傾向が見られました。
鍼灸治療の効果と考察
聴力の回復
鍼灸治療を開始してから11回目の治療(発症から37日目)では、日常生活における会話に不自由を感じなくなり、聴力改善が顕著にみられました。
治療期間中、耳鳴りの頻度と強度も減少し、患者の生活の質が大幅に向上しました。
治療の有効性
突発性難聴の治療において、早期の西洋医学的治療と並行して鍼灸治療を行うと効果が高くなります。
患者の自覚症状として、鍼灸治療により患部の温かさが持続し、血流が改善されたことが効果が実感できたとおっしゃっています。
まとめ
今回、突発性難聴の患者に対して西洋医学的治療と鍼灸治療を併用することで、聴力の改善がみられました。
鍼灸治療は、患部の血流改善を促進し、患者の生活の質を向上させる一助となる可能性があります。
専門機関で良くならない症状などあれば、お気軽にご相談ください。