膝痛の対処法
ヒアルロン酸は治療効果がない
BMI25以上の場合は5%体重を減らす
膝痛を感じて、整形外科へ行くと「ヒアルロン酸」の注射を打ちます。打った瞬間はよくても、次の日には痛みがぶり返している。そんな方が多く来院されます。
日本の整形外科では当たり前のように処方されている「ヒアルロン酸注射」ですが、アメリカではもはや推奨されていません。(1)
ヒアルロン酸が膝痛治療で使われる理由
ヒアルロン酸注射の治療は粘性補充療法とも呼ばれ、滑液の「粘性」または濃厚で粘着性のある、ゲル状の特性を補完します。
ヒアルロン酸注射が効果があるとされる背景には、痛みを打ったえる膝痛の滑液が減少したり、無くなったりしていることが多く見られます。滑液の主成分であるヒアルロン酸を注射することで、膝を保護するためにあります。滑液は歩くことや走ること、階段を上ることなどの日常動作で受ける衝撃を吸収するように働く、厚いゲル状の液体です。
関節の潤滑液であるヒアルロン酸を足して、摩擦を少なくしたり、衝撃を吸収したりする作用を期待するということです。まあ、わかりやすいですよね。
でも、確かにヒアルロン酸注射を打ったすぐは、痛みがなくなったり、歩きやすくなったりしますが、割と短時間で痛みが戻ってきます。これはどういうことなのでしょうか?
ヒアルロン酸の効果は人によってまちまち
アメリカ整形外科学会(American Academy of Orthopaedic Surgeons)が自身のサイトで次のように言っています。
「関節炎の関節にヒアルロン酸を加えることは動きを容易にしそして痛みを減らすという理論があります。 しかし、最近の研究では、ヒアルロン酸の注射が疼痛を軽減したり機能を改善したりするのに有効であると判明していません。一部の患者は疼痛緩和を報告しているが、一部の人々は注射を打っても全く変化がないと報告しています。」
“The theory is that adding hyaluronic acid to the arthritic joint will facilitate movement and reduce pain. The most recent research, however, has not found viscosupplementation to be effective at significantly reducing pain or improving function. Although some patients report pain relief with the procedure, some people are not helped by the injections.”(2)
ヒアルロン酸注射の効果については、まだまだ明らかになっていないということが実情です。しかし、たとえ短時間でも痛みを抑えたいというのは人情ですよね。でも、あまり打ちすぎるととんでもないことが起こります。
以下にヒアルロン酸を打ち続けた結果、とんでもないことがおこることが示唆されています。
ヒアルロン酸注射は膝の変性を加速させる
変形性膝関節症とヒアルロン酸を打った結果を調査した研究では、次のように結論づけています。「医師によるヒアルロン酸注射は膝変形性関節症の患者に著しい痛みの軽減と日常生活機能の改善をもたらすことができる。しかし、矯正治療なしの痛みの軽減は膝内転運動を増加させ、膝関節に過度の負荷をかけることがある。膝の変形をさらに加速させる可能性があります(3)。
ヒアルロン酸注射によって、一定の期間は痛みを抑えることが、痛みを押させることで膝への負担が増えてしまう。だから、膝の変形が進んでしまうということですね。
一時的に痛みが治ったのなら、関節を矯正することも勧められています。この場合は骨を切る手術も矯正に入ります。そこまで変形が進んでいない場合は、筋肉や靭帯を緩めることで膝の矯正も可能です。
さらにメタボとの関係もある
変形性膝関節症と肥満の関係を調べた研究では、肥満であれば膝に変形を起こし、痛みを打ったえる確率が高くなると報告しています。(4)
メタボリックシンドロームでを解消しないと膝の変形、痛みのリスクが高くなるということですね。膝が痛いなら、痩せないとダメです。(^。^)v
まとめ
ヒアルロン酸注射は痛みを抑える効果はある。だから急な痛みを抑えるための処置としては一時的にはOK。でも、長期間打ち続けると、変形が進んでしまい、手術の適応になってしまう。
だから、ヒアルロン酸を打ちながら適切な矯正ができるように務めるべき。
参考文献
1:変形性関節症治療の国内外のガイドライン
独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)脊椎脊髄センター 川口 浩
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsjd/35/1/35_1/_pdf
2. Diehl P, Gerdesmeyer L, Schauwecker J, Kreuz PC, Gollwitzer H, Tischer T. Conservative therapy of osteoarthritis. Orthopade. 2013 Feb 1.
https://orthoinfo.aaos.org/en/treatment/viscosupplementation-treatment-for-knee-arthritis
3.Kinetics features changes before and after intra-articular hyaluronic acid injections in patients with knee osteoarthritis.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25683308
4.PubMed
Association between metabolic syndrome and knee osteoarthritis: a cross-sectional study.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29246142
PubMed Central
The pain-relieving qualities of exercise in knee osteoarthritis
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5074793/