乳酸菌とは、糖を発酵して大量の乳酸を作る細菌の総称です。ラクトバチルス属は、現在180種以上の種を含みます。
ヒトや動物の体をはじめ、環境中の多くの場所から見つけることができます。
乳酸菌は、ヨーグルト、チーズ、漬物、清酒、などの発酵食品の製造に利用されています。
整腸、免疫調節、動脈硬化の予防効果、抗腫瘍などの作用が科学的に証明されてきています。
代表的な乳酸菌の種類
生物の分類として大きいものから
『門→網→目→科→属→種』となります。
乳酸菌のほとんどがラクトバシラス目に含まれます。
ラクトバシラス目は以下の6科
- ラクトバシラス科
- アエロコックス科
- カルノバクテリウム科
- エンテロコッカス科
- ロイコノストック科
- レンサ球菌科(ストレプトコッカス科)
乳酸菌(ラクトバシラス目)の分類
- ラクトバシラス属
- エンテロコッカス属
- ラクトコッカス属
- ペディオコッカス属
- ロイコノストック属
- ストレプトコッカス属
- カルノバクテリウム属
1.ラクトバシラス属 (Lactobacillus)
ラクトバシラス属は、
フィルミクテス門
バシラス綱
ラクトバシラス目
ラクトバシラス科
に属するグラム陽性の桿菌でありラクトバチルスとも呼ばれます。
一般に「乳酸桿菌」と呼ぶ場合、狭義にはこの属をさす場合が多い。
種によって乳酸のみを産生(ホモ乳酸発酵)するものと、乳酸以外のものを同時に産生(ヘテロ乳酸発酵)するものがあります。L. delbrueckii、L. acidophilus、L. caseiなど。
ラクトバシラス属(Lactobacillus)は、ヨーグルトの製造に古くから用いられています。ヨーグルト製造には、ラクトバチルス・ブルガリクス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・アシドフィラスなど多くのラクトバシラス属に属する種が利用されています。
ヒトの消化管にも多く生息しており、糞便からも分離されます。
ラクトバシラス属のデーデルライン桿菌と呼ばれる細菌群は、女性の膣内に生息しています。
ラクトバシラス属(L. fructivorans、L. hilgardii、L. paracasei、L. rhamnosusなど)の一部が日本酒に混入すると、異臭や酸味などの発生(火落ち)の原因になります。
ラクトバチルス・カゼイ・シロタ株(Lactobacillus casei Shirota)は、別名「ヤクルト菌」や「LCS」と呼ばれています。
2.エンテロコッカス属 (Enterococcus)
フェカリス (E. faecalis) 、フェシウム (E. faecium) などがあります。
エンテロコッカス属は、ラクトバシラス目エンテロコッカス科に属するグラム陽性の球菌で、ホモ乳酸発酵をします。
回腸、盲腸、大腸に生息しています。
フェカリス(E. faecalis)は、ビフィドバクテリウム(ビフィズス菌)、ラクトバチルス(アシドフィルス菌)と共に配合されて整腸薬として用いられる事が多い乳酸菌です。
フェカリス菌株やEF-2001株 (E.faecalis EF-2001) を加熱殺菌した菌体の免疫賦活能力が高いとされる報告が見られる。
E. faecalis と E. faecium は薬剤耐性が高く、院内感染の原因として重要です。(バンコマイシン耐性腸球菌の代表)。
E. faecalis は、ビタミンB群(ニコチン酸B3、葉酸B9、ビオチンB7)が十分にあると活動が活発になる。
3.ラクトコッカス属 (Lactococcus)
ラクトコッカス属は、ラクトバシラス目ストレプトコッカス科に属するグラム陽性の球菌です。
狭義の「乳酸球菌」でホモ乳酸発酵をします。
牛乳や乳製品に多く見られ、市販のカスピ海ヨーグルトなどの発酵乳製品に用いられます。L. lactis、L. cremorisなど。
4.ペディオコッカス属(Pediococcus)
ペディオコッカス属は、ラクトバシラス目ラクトバシラス科に属するグラム陽性の球菌でホモ乳酸発酵をします。
ピクルスなどの植物性の発酵食品に見つかることが多いです。
P. damnosusなど。
5.ロイコノストック属 (Leuconostoc)
ロイコノストック属は、ラクトバシラス目ロイコノストック科に属するグラム陽性の球菌で、ヘテロ乳酸発酵をする。
ザワークラウトなどの植物性の発酵製品に多く見つかります。
L. mesenteroidesなど。
6.ストレプトコッカス属(レンサ球菌属) (Streptococcus)
ストレプトコッカス属は、ラクトバシラス目ストレプトコッカス科に属するグラム陽性の球菌です。
ストレプトコッカス属(レンサ球菌)は乳酸菌にも分類されています。
Streptococcus thermophilusは、一般的なヨーグルト(ブルガリアヨーグルトなど)の発酵乳製品に含まれています。
ストレプトコッカス属のミュータンス菌(S. mutans)は、虫歯(う蝕)の主な原因の一つです。
7.カルノバクテリウム属
カルノバクテリウム属(Carnobacterium)は、ラクトバチルス属(Lactobacillus)の一部の菌種が独立したものです。
桿菌で乳酸以外にも酢酸やギ酸を生成するヘテロ型発酵の乳酸菌です。
耐冷性が高く0℃から2℃で生育がみられる特徴があります。
食肉や食肉製品を緑色に変色させるカルノバクテリウム属マルタロマチカム菌(Carnobacterium maltaromaticum)は、ネバネバの糸を引くネトの産生や酸っぱい腐敗臭の原因にもなる細菌です。