鍼を受けたあとに、
「身体がポカポカしてきました」
「足先が温かくなった気がします」
「鍼をしたところだけじゃなく、身体全体が温かい感じがします」
このように感じる方がいます。
鍼そのものが温かいわけでもありませんし、お灸のように熱を加えているわけでもありません。
では、なぜ鍼をしたあとに温かさを感じる人がいるのでしょうか?
ここでよく「鍼で血流が良くなったからです」と説明されます。
間違いとは言い切れませんが、実際の身体の反応はもう少し複雑です。
鍼による刺激は皮膚や筋肉にある感覚神経へ入力され、その刺激に対して局所の循環や神経系などが反応します。研究でも鍼刺激後の皮膚温や血流の変化が観察されています。
今回は、鍼のあとに身体がポカポカする人がいる理由を、現在分かっている範囲から整理してみます。
鍼をすると身体がポカポカする原因
まず重要なのは、「鍼を刺す=直接身体を温める」わけではないということです。
鍼は非常に細い金属製の針を身体へ刺激として加える施術です。
皮膚や筋肉には、触ったことや圧力、痛みなどを感知するさまざまな感覚受容器や神経があります。
鍼をすると、こうした組織に物理的な刺激が加わります。
その刺激は末梢神経を通じて脊髄や脳へ伝わり、身体ではさまざまな反応が起こります。
その一つとして研究されているのが、局所の微小循環です。
微小循環とは、身体の細い血管を流れる血液の循環のことです。
鍼刺激後の局所血流について調べた研究をまとめたシステマティックレビューでは、対象となった8件のランダム化比較試験で、何らかの微小循環の変化が確認されました。
健康な人を対象にした7研究のうち4研究では、対照群と比べて鍼刺激後に血流の有意な増加が報告されています。
ただし、すべての研究で血流が増えているわけではありません。
刺激直後には一時的に血流が低下した研究もあり、刺激方法や身体の状態によって反応が異なる可能性があります。
そのため、「鍼をすると必ず血流が増える」と考えるより、鍼刺激によって局所の循環に変化が起こることがあると理解する方が現在の研究には合っています。
「ポカポカする」=血流だけとは限らない
もう一つ面白いのが、皮膚温です。
鍼刺激と皮膚温を調べた研究では、鍼をした側の腕で皮膚温が平均約0.35℃上昇したという報告があります。
ところが、この研究では皮膚温の上昇と血流変化が単純には一致しませんでした。
つまり、「温かくなった=その場所の血流が増えた」と単純に説明できない可能性があります。
人が感じる「温かい」という感覚には、皮膚温だけでなく神経から入る情報や身体全体の状態なども関係します。
そのため、鍼のあとにポカポカしたとしても、「血液が一気に全身を巡った」と考える必要はありません。
鍼をしたあとに感じる症状は人によって違う
鍼を受けたあと、全員が同じ反応をするわけではありません。
- 身体がポカポカする
- 手足が温かく感じる
- 眠くなる
- 身体の力が抜けた感じがする
- 肩や背中が軽く感じる
- 特に何も感じない
どれか一つが「正しい鍼の反応」というわけではありません。
ポカポカしなかったから鍼が効いていない、眠くならなかったから身体が反応していない、と判断する必要もありません。
刺激する場所や刺激量、その日の身体の状態などによって感じ方は変わります。
放置するとどうなる?
「鍼のあとに身体が温かくならない」こと自体は、放置する・しないという問題ではありません。
むしろ確認したいのは、鍼を受ける前から手足の冷えや身体の冷えを強く感じている場合です。
冷えの原因は一つではありません。
気温が低い環境に長くいることもあれば、運動量が少ない場合もあります。貧血、甲状腺機能の問題、末梢循環の問題などが隠れていることもあります。
特に、以前は冷えなかったのに急に冷えるようになった、片側の手足だけ極端に冷たい、皮膚の色まで変化する、強いしびれや痛みを伴うといった場合には、単なる「冷え性」と自己判断せず医療機関で確認することも大切です。
セルフケア
セルフケア1 施術後は身体の変化を少し観察する
鍼を受けたあと、すぐに立ち上がって帰るだけではなく、自分の身体を少し確認してみてください。
手はどうか。
足はどうか。
肩の力はどうか。
呼吸はどうか。
「足先が温かい」「呼吸が楽」「眠い」「身体の力が抜けている」など、自分がどのような反応をしているかを知ることも大切です。
セルフケア2 施術直後に激しい運動を詰め込まない
鍼のあとに身体が軽く感じると、「今のうちに運動しておこう」と考える方もいます。
通常の日常生活を過度に制限する必要はありませんが、施術直後から激しい運動や大量に汗をかく予定を無理に入れる必要もありません。
特に普段から疲労が強い方は、その日の身体の反応を見ながら過ごしてください。
セルフケア3 「温かくなったか」だけで効果を判断しない
これが一番大切です。
鍼のあとにポカポカすると、変化を実感しやすいため「今日は効いた」と感じるかもしれません。
反対に何も感じないと、「今日は効いていないのかな」と不安になる方もいます。
しかし、施術の評価を温かさだけで決める必要はありません。
例えば肩こりなら首がどこまで動くようになったか。腰痛なら立ち上がる動作はどうか。眠りの問題なら、その日の夜から数日間の睡眠はどうか。
もともと困っていた症状や動作がどう変化したのかを見ることの方が大切です。
鍼と自律神経には関係がある?
鍼刺激と自律神経の関係についても研究されています。
自律神経は、心拍、血圧、発汗、血管の収縮や拡張など、自分の意思だけでは直接コントロールしにくい身体機能の調節に関わっています。
鍼刺激が感覚神経から脊髄・脳へ伝わり、自律神経系に関係する神経回路へ影響する可能性について、基礎研究・臨床研究の両面から検討されています。
ただし、「鍼をすると副交感神経が優位になる」という一言ですべての反応を説明するのは正確ではありません。
刺激する場所、刺激の強さ、身体の状態によって反応が異なることが分かってきています。
身体がポカポカする現象も、局所の循環、皮膚温、神経系の反応などが組み合わさって起きている可能性があります。
当院で大切にしている考え方
八尾市恩智中町の杉本接骨鍼灸院では、鍼をしたあとに「温かくなりました」という反応だけを施術の評価にはしていません。
施術前に困っていたことが、施術後にどう変化しているかを確認します。
例えば首を動かしたときの違和感、肩の緊張、腰を曲げ伸ばししたときの状態、呼吸のしやすさなどです。
また、鍼では刺激量も大切です。
強い刺激をたくさん入れれば、その分だけ良いというものではありません。
身体の状態や症状、鍼への慣れ方などを確認しながら、その方に合わせて刺激する場所や刺激量を考えていきます。
「鍼のあとに身体が温かくなる」という感覚は、身体で何らかの変化が起きていることを感じる一つのきっかけにはなります。
ただ、それだけで身体の状態を決めるのではなく、もともとの悩みと合わせて変化を見ていくことが大切です。
まとめ
鍼をしたあとに身体がポカポカする人がいるのは、不思議な現象ではありません。
研究では、鍼刺激によって局所の血流や皮膚温などが変化することが報告されています。
ただし、「鍼をしたら必ず血流が増える」「ポカポカするほど効果が高い」とまでは言えません。
鍼の刺激によって皮膚や筋肉の感覚神経へ情報が入り、局所循環や自律神経などを含む複数の生理的な反応が起き、その結果として温かさを感じる人がいると考える方が自然です。
次に鍼を受けたときは、ポカポカするかどうかだけではなく、肩の力、呼吸、身体の動き、眠気などにも少し意識を向けてみてください。
「自分の場合は鍼をするとどんな反応が出ているんだろう?」という方は、施術前後の身体の状態を確認しながら一緒に整理していきましょう。
関連記事
- 鍼って刺して何が起きている?身体の反応をわかりやすく解説
- 鍼って本当に自律神経に効くんですか?
- 鍼のあとに眠くなるのはなぜ?
- 冷え性の原因は血流だけ?身体が冷える理由を解説
- 鍼灸ではなぜ脈を確認するの?施術前後に脈をみる理由
院情報
杉本接骨鍼灸院
大阪府八尾市恩智中町1-35-1-103
072-943-6521
https://yao-diet.com/
ハッシュタグ
#杉本接骨鍼灸院 #八尾市 #恩智駅 #鍼灸 #鍼治療 #鍼 #血流 #冷え性 #身体の冷え #自律神経 #皮膚温 #肩こり #腰痛 #東洋医学 #八尾市鍼灸
