
「砂糖って、そんなに体に悪いんですか?」
患者さんからも、よく聞かれる質問です。
最近は、
「砂糖は毒です」
「砂糖をやめれば病気が治る」
「白砂糖は体を冷やす」
といった情報を、SNSや動画で目にすることがあります。
反対に、
「脳には糖が必要だから、砂糖を食べても問題ない」
という話もあります。
ここまで正反対の情報が並ぶと、何を信じたらよいのか分からなくなりますよね。
実際どうなんでしょう。
砂糖は、少しでも口にしたら体を壊すような食品ではありません。
ただし、毎日のように多い量を摂り続ければ、体重増加、虫歯、血糖値の上昇、脂肪肝、2型糖尿病、心臓や血管の病気につながる可能性が高くなります。
ここで一番大事なのは、
砂糖が入っているかどうかだけでなく、量と摂り方を見ることです。
砂糖と糖質は同じではありません
まず、ここが結構勘違いされるところです。
砂糖と糖質は、まったく同じ意味ではありません。
ご飯、パン、麺、イモ類などに含まれるデンプンも糖質です。
砂糖は、糖質の一部です。
砂糖は主に、ブドウ糖と果糖がつながったショ糖という成分でできています。
体内に入ると分解され、エネルギーとして使われます。
人間の体は、ブドウ糖をエネルギー源として利用しています。
だからといって、砂糖を積極的に食べなければ脳が動かなくなるわけではありません。
ご飯やイモ類などのデンプンからもブドウ糖は作られます。
また、食事から糖質が少ないときには、体内で必要なブドウ糖を作る仕組みもあります。
つまり、
「体にはブドウ糖が必要」
という話と、
「砂糖を食べる必要がある」
という話は別です。
問題になりやすいのは「遊離糖」です
WHOが減らすよう勧めているのは、糖質全体ではありません。
問題としているのは、主に「遊離糖」と呼ばれるものです。
遊離糖には、
・食品メーカーが加えた砂糖
・料理をするときに加えた砂糖
・はちみつ
・シロップ
・果汁
・濃縮果汁
などに含まれる糖が含まれます。
一方で、果物を丸ごと食べたときに、細胞の中に含まれている糖や、牛乳に自然に含まれる乳糖は、同じようには扱われません。
WHOは、遊離糖を1日の総摂取エネルギーの10%未満に抑えるよう勧めています。さらに健康上の利点を得るため、5%未満に減らすことも提案しています。
1日に2,000キロカロリー食べる人で考えると、
10%は約50グラム。
5%は約25グラムです。
砂糖25グラムは、小さじで約6杯です。
この数字だけを見ると、
「意外と食べられる」
と思うかもしれません。
ところが、清涼飲料水や甘いカフェ飲料を飲むと、一度にかなりの量を摂ってしまいます。
500ミリリットルの甘い飲料に、砂糖が40〜60グラム程度含まれる商品もあります。
飲み物一本だけで、1日の目安を超えることもあるということです。
なぜ甘い飲み物が問題になりやすいのか
私は、砂糖を気にするなら、まず甘い飲み物を見直すべきだと考えています。
ケーキを一度食べたことよりも、
毎日飲むジュース。
甘い缶コーヒー。
スポーツドリンク。
砂糖入りの紅茶。
エナジードリンク。
こうした習慣のほうが、摂取量を増やしやすいからです。
液体の糖は、短時間で摂ることができます。
固形物ほど満腹感が続きにくいため、飲み物でカロリーを摂っても、その後の食事量が十分に減らないことがあります。
結果として、1日の総摂取カロリーが増えやすくなります。
砂糖入り飲料については、摂取量が多いほど、体重増加や2型糖尿病などの心血管・代謝疾患との関連が強くなることが、複数の研究やメタ解析で報告されています。
ただし、こうした研究の多くは観察研究です。
砂糖入り飲料だけが病気の原因だと、すべて断定できるわけではありません。
よく飲む人は、
運動量が少ない。
外食が多い。
喫煙している。
睡眠時間が短い。
食生活全体が乱れている。
といった別の特徴を持っている可能性もあります。
それでも、砂糖入り飲料を減らすことは、余分な糖とカロリーを減らす方法として、実行しやすく効果の大きい対策です。
砂糖を食べると、すぐ糖尿病になるのか
砂糖を一度食べたからといって、すぐ糖尿病になるわけではありません。
2型糖尿病は、
体質。
年齢。
内臓脂肪。
筋肉量。
運動不足。
食べ過ぎ。
睡眠。
喫煙。
薬の影響。
こうした要素が重なって起こります。
ただ、砂糖を多く摂る生活が続くと、摂取カロリーが増え、体脂肪、とくに内臓脂肪が増えやすくなります。
内臓脂肪が増えると、インスリンが効きにくくなります。
インスリンは、血液中のブドウ糖を細胞に取り込ませ、血糖値を下げる働きをするホルモンです。
インスリンが効きにくくなると、体はさらに多くのインスリンを出そうとします。
その状態が長く続くと、血糖値を十分に下げられなくなり、2型糖尿病につながります。
つまり、
砂糖を食べた瞬間に糖尿病になるのではありません。
砂糖を多く含む食品や飲料を摂り続け、余分なカロリーが積み重なることが問題です。
果糖は肝臓に悪いのか
砂糖には、ブドウ糖と果糖が含まれています。
果糖は主に肝臓で代謝されます。
大量の果糖を継続的に摂ると、中性脂肪が作られやすくなり、脂肪肝や血中脂質の悪化につながる可能性があります。
ただし、ここでも量と食品の形を分けて考える必要があります。
果物にも果糖は含まれます。
だからといって、
「果糖が入っているから果物も体に悪い」
とはなりません。
果物には、
食物繊維。
水分。
ビタミン。
ミネラル。
ポリフェノール。
などが含まれています。
丸ごとの果物は、噛んで食べるため、ジュースより摂取速度が遅く、満腹感も得やすくなります。
WHOも、炭水化物は主に全粒穀物、野菜、果物、豆類から摂ることを推奨しています。成人では、野菜と果物を1日400グラム以上、自然に含まれる食物繊維を1日25グラム以上摂ることが勧められています。
果物を食べることと、果汁飲料を大量に飲むことは同じではありません。
黒糖やはちみつなら体にいいのか
「白砂糖は悪いけれど、黒糖やはちみつなら大丈夫」
と思っている方もいます。
黒糖やはちみつには、白砂糖よりミネラルや植物由来成分が含まれることがあります。
しかし、主成分が糖であることは変わりません。
血糖値や摂取カロリーへの影響が、なくなるわけではありません。
てんさい糖。
きび砂糖。
メープルシロップ。
アガベシロップ。
これらも、味や風味、含まれる微量成分に違いはあります。
ただし、
「自然な甘味料だから、いくら食べてもよい」
ということにはなりません。
健康を考えるときは、砂糖の種類を変えることより、甘味料全体の量を減らすほうが影響は大きいです。
砂糖は依存性があるのか
「砂糖は麻薬と同じように依存する」
という話も見かけます。
甘いものを食べると、脳の報酬系が反応し、快感や満足感が生じます。
そのため、疲れたときやストレスが強いときに、甘いものを欲しくなることはあります。
ただし、人間において砂糖が薬物と同じ仕組みで依存症を起こすと断定するのは適切ではありません。
甘いものがやめられない背景には、
空腹。
睡眠不足。
習慣。
ストレス。
極端な食事制限。
目の前にお菓子がある環境。
なども関係します。
昼食をほとんど食べず、夕方に強い空腹になれば、甘いものが欲しくなるのは自然です。
意志が弱いからではありません。
食事の間隔や内容を整えることで、欲求が落ち着く人もいます。
私はこう考えています
砂糖は、完全に排除しなければならないものではありません。
誕生日にケーキを食べる。
旅行先で甘いものを楽しむ。
家族とデザートを食べる。
こうした時間まで否定する必要はありません。
問題は、
特別な日に食べることではなく、
毎日、無意識に摂り続けていることです。
まず確認してほしいのは、
・甘い飲み物を毎日飲んでいないか
・缶コーヒーに砂糖が入っていないか
・健康によさそうな飲料に糖が多くないか
・ヨーグルトやシリアルに砂糖が多くないか
・間食が習慣になっていないか
・空腹ではないのに甘いものを食べていないか
という部分です。
いきなり砂糖をゼロにする必要はありません。
甘い飲み物を水やお茶に変える。
砂糖入りコーヒーを無糖に近づける。
お菓子を大袋のまま食べない。
毎日食べていたものを、週に数回へ減らす。
これだけでも摂取量は変わります。
まとめ
砂糖は、少量食べただけで体を壊す毒ではありません。
しかし、多い量を日常的に摂り続けると、体重増加、虫歯、脂肪肝、2型糖尿病、心臓や血管の病気につながる可能性が高くなります。
特に見直したいのは、砂糖入りの飲み物です。
大切なのは、
「砂糖を食べたか、食べていないか」
という二択ではありません。
何から摂っているのか。
どれくらい摂っているのか。
毎日の習慣になっていないか。
そこを確認することです。
甘いものを一度楽しんだから、健康が崩れるわけではありません。
ただし、毎日積み重なれば、体はきちんと反応します。
身体って、正直なんですよね。
食事を極端に制限するのではなく、自分が普段どこから砂糖を摂っているのかを、一度確認してみてください。
一人ひとり、食生活や体の状態は違います。
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