1.外反母趾とは
子供から大人まで、女性のおよそ30%に認められる外反母趾。母趾(足の親指)のつけ根が飛び出し、その先が小指側に曲がってしまった状態をさします。
足の代表的な疾患ですが、日本人が靴を履くようになってから増えた病気です。
痛みに耐えながら日々を過ごしている人も多いとおもいます。患者数が多いということで、根拠の不十分な治療法が乱立しました。
それを避けるため、論文をもとに「外反母趾診療ガイドライン」が作られました。
今回はガイドラインに基づいた正しい知識と治し方をご紹介します。
母趾が小指側に曲がり、角度が20度以上になると外反母趾と診断されます。
この角度が20度~30度は軽度、30度~40度が中等度、40度以上が重度に分類されます。
圧倒的に中高年の女性に多いです。
一般的には、ハイヒールが原因と思われがちですが、ハイヒールを履いたことがない場合でも、外反母趾になることがあります。
ハイヒールを毎日履いている人でも、外反母趾にならない女性もいます。
つまり、遺伝による生まれつきの足の形と生活習慣(歩き方や靴の適合性など)、さらに他の原因が絡み合って外反母趾が発症します。
放置していても、変形が進行するだけで、自然に治癒することはありません。
2.エジプト型は要注意
脚の形にもよって外反母趾を発症しやすくなります。
母趾より足の人差し指の方が、長い「ギリシャ型」、母趾の方が長「エジプト型」、同じ長さの「スクエア型」といいます。
日本人の場合はそれぞれ25%、70%、5%の比率と言われています。
最も多い「エジプト型」は、体重をかけた際に、足全体のバランスを保とうとして母趾のつけ根にねじれた力がかかりやすく、その力を逃すために関節が内側に変形し外反母趾になりやすい形です。
3.偏平足・開張足も
人間の足は、二足歩行を可能にするために、アーチ構造を獲得しました。
このアーチ構造により、踏み出すための動力を産み出す「バネ作用」、接地の衝撃を緩和する「クッション作用」、片足でも倒れにくくなる「安定作用」を得ることができました。
このアーチ構造は「足底筋膜」という強靭な線維束によって作られます。
が
このうち縦のアーチが弱いタイプを偏平足、横のアーチが弱いタイプを開張足といいます。
この部分に、過剰な負担がかかり炎症が起こってしまう状態を「足底筋膜炎」といいます。
偏平足や開張足でも、母趾のつけ根にねじれた力がかかりやすく外反母趾になりやすいので、注意が必要です。
4.外反母趾を起こしやすい生活習慣は
外反母趾を発症させやすい生活習慣は、「靴」に大きな原因があります。
足のサイズや大きさ、形に適切でない靴を履いて歩くことで、「足の指をうまく使えない」状態になってしまいます。
そうすると上記の扁平足や開帳足を引き起こしてしまいます。
幅が狭い靴や、ハイヒールが外反母趾のリスクを高くするということはありません。
むしろ、逆で、「幅の広い靴」や「踵が緩い靴」を履くことで、外反母趾のリスクが高くなってしまいます。
5.治療方法
まずはテーピングで、適性をみる
外反母趾の治療方法は保存療法と手術療法があり、保存療法には①靴指導、②運動療法、③装具療法、④薬物療法があります。
① 靴指導
痛くない靴=幅の狭い靴
大きい靴をはいていると、どんどん足指が曲がってきます!
痛いとゆるい靴を履きたくなりますが、それは間違いです。
親指の出っ張り痛くなる!という方は、フィットする靴を探せていないだけです。
《土踏まずからかかとまで
できるだけ細い靴を選びなさい。
そうすればあなたの指先は自由になる。》
これは(Salvatore Ferragamo)の言葉です。
またアーチを補強するような形のインソール(中敷き)を併用することも有効です。
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② 運動療法
軽度から中等度の外反母趾に対して痛みを軽減
ゴム紐を両足の母趾にかけて離す方向に力を入れるHohmann体操
足の指でグー・パーを作って指を開く母趾外転筋運動
軽度から中等度の外反母趾に対して若干の変形矯正効果が期待できます。
③ 装具療法
大きく以下の3種に分けられます。
いずれも痛みを軽減する効果はあります。
1・痛いところを除圧するパッド
2・歩行時や夜間に使用する矯正用装具
3・靴指導でも述べたアーチを補強するインソール
④ 薬物療法
消炎鎮痛剤入り外用薬は他の保存療法と併用することによって痛みを軽減させることができます。
手術療法
変形が進み保存療法の効果が期待できない場合は、手術療法の適応となります。
手術の術式は多数あり、変形の程度、足全体の形、体形などを考慮して術式を選択します。
最も一般的なのは骨切り術といい、骨の一部を切除して変形を矯正する方法があります。
それぞれメリット・デメリットがありますので、医師に相談なさってください。