1. 不妊の原因と東洋医学の考え方
鍼灸治療院での臨床経験を通して、東洋医学的な観点から多くの方が抱える不妊の原因として「中気下陥」が挙げられます。
こちらの状態とは、体を元気に保つ「気」が、重要な部位である下腹部(子宮・卵巣)へと集まらず、体の中心部分に気が滞り不足している状態を示しています。
中気下陥(ちゅうきかかん)とは
「中気下陥」とは、気が十分に供給されていないことで、体の内部の臓器が適切な位置を保てなくなってしまった状態を指します。
これは気が持つ「固摂(こせつ)」作用、すなわち、臓器を適切な位置に固定する作用が低下しているためです。
中気下陥の主な症状
中気下陥に関連する症状として具体的には以下のようなものがあります。
- 胃下垂
- 腎下垂(遊走腎)
- 子宮下垂(子宮脱)
- 脱肛 さらに、ふらつき、手足のだるさ、慢性的な下痢などの症状も中気下陥の範疇に含まれることが多いのです。
中気下陥の原因
その主な原因として、脾(ひ)に起因する気の不足が指摘されています。このため、中気下陥は「脾気虚」という観点からもアプローチすることが有効です。
2. 東洋医学の中の「気」とは?
「気」という言葉は東洋医学において中心的な役割を果たしています。
この「気」は生命活動や生理的機能を維持する原動力であり、私たちの身体のエネルギーそのものを指しています。
気・血・水の3つは、身体を動かす原動力としての役割を果たしています。
気の状態を風船に例えると、適量の空気(気)があれば風船は浮きます。
しかし、空気が過剰なら風船は膨れ上がり「気逆(きぎゃく)」、空気が不足すると「気虚(ききょ)」となります。そして、さらなる空気の減少で風船は下降し、「気陥(きかん)」の状態となります。
朝、ベッドから1時間も起き上がれないほどの極度の疲れは「気陥(きかん)」の兆候と見られ、そのために「中気下陥」に対する漢方を摂取することをおすすめしました。
3. 「気」の特性とは?
「気」は常に一定の量を保ち続けるものであり、特定の部位に優先して集まる傾向があります。
現代人の生活環境や生活リズムの変化により、特に頭部に「気」が集まりやすくなっており、その結果として下腹部の「気」が不足することが起こっています。
4. 現代社会と「気」の偏り
現代の生活習慣や環境の影響で、「気」の分布が偏ってしまうことが増えています。
特に目を酷使する行動や頭を使う行動が多い現代人には、中心部の気が不足してしまう傾向があります。
不足した「気」が下半身に滞ってしまうことで「中気下陥」の状態が進行し、これが不妊の原因となり得ます。
特に現代人の生活環境では、下半身を使う機会が少なく、その結果として「気」が停滞しやすくなっています。
5. 栄養の改善と「気」の関係
「気」の健康を維持するためには、適切な栄養摂取が欠かせません。
特に鉄分やビタミンB群などのビタミン・ミネラルの摂取を心がけることで、体の中の「気」の巡りを良くし、不妊のリスクを減少させることが期待されます。
6. 漢方薬での対処法
中気下陥の改善を目指す場合、脾気虚をサポートする漢方薬が推奨されることが多いです。
その中でも、「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」は特に固摂作用を回復させる効果に優れていると言われています。
もちろん、体質や症状によって最適な漢方薬は異なるため、鍼灸師や漢方医に相談することをおすすめします。
【まとめ】
不妊の一因として「中気下陥」が東洋医学において考えられています。
東洋医学の観点から「中気下陥」とは、気の不足による臓器の位置のズレや関連症状を指します。
脾気虚との関連が深く、これを改善するための漢方薬や栄養の改善が必要とされています。
漢方薬の選択や適切なケアには専門家のアドバイスが欠かせません。