東洋医学における”感情”と”五臓”の関係性は、非常に密接だとされています。
初めて耳にすると「本当に関係があるの?」と疑問に思われるかもしれません。しかし、緊張感から胃が痛む、気落ちして体が重だるいと感じるなど、実は私たちの日常にも繋がっている現象です。
言い換えれば、それはストレスの影響ともいえます。
東洋医学の教え、『陰陽五行説』によれば、”五臓は感情と密接に結びついている”とされ、五臓の調子と感情のバランスは相互に影響を与え合っていると言われています。
例えば、感情の中の”怒り”は、肝の健康と大きく関わっているとされています。
この度は、この”感情”と”五臓”の奥深い関係について、より詳しくお伝えしていきます。
◎陰陽五行説の基本
『陰陽五行説』は、古代中国の”陰陽論”と”五行説”が組み合わさって形成された考え方です。
この理論によれば、宇宙のあらゆるものは、陰と陽の2つの性質と、五つの要素から成るとされています。
~五行説と五臓の繋がり~
『五行説』は、自然界の”木・火・土・金・水”の5つの要素により万物が成り立っているという思想です。
私たちの身体の”五臓”も、この説から派生しています。
五臓と言うと、通常の臓器を想像する方もいらっしゃるでしょう。しかし、ここでの五臓は、「肝」、「心」、「脾」、「肺」、「腎」のことを指します。
~感情との関連性~
東洋医学においては、抑え込んだ感情や過度なストレスが内臓に悪影響を及ぼし、それが血行やエネルギーの流れを悪化させ、病の原因になるとされています。
ここで取り上げる感情は、”怒”、”喜”、”思”、”憂”、”悲”、”恐”、”驚”の7つです。
「肝」への”怒”の影響
「肝」は、循環や代謝、排泄、解毒の役割を果たしています。
肝臓や胆のう、更には自律神経や目、涙、爪などにも影響を及ぼすと言われています。
”怒”、すなわち怒りやイライラは、肝にストレスを与えます。この結果、さらにイライラや怒り易くなることがあります。
正義感が強い方や責任感が高い方は、肝の健康を気遣うことが大切です。
「心」を揺さぶる”喜”
「心」は、心臓や小腸の他、舌や脈拍、さらに脳の動きを司っています。
”喜”は一般に良い感情とされますが、過度な興奮は心に負担をもたらします。
そして、その負担は感情の不安定さや、入眠障害、浅い眠りなどの原因になることがあるのです。
たまにはリラックスして、自分を癒やす時間を持つことも大切です。
「脾」とその働きに関する”思”
「脾」は、私たちの消化や栄養の吸収を担当しています。
思い詰めたり、悩みがちな時、脾の機能に影響が及び、胃の不調として現れることがあります。この脾の弱化が、さらに悩むことを引き起こすので、気をつける必要があります。
集中力や思考力が豊かな方々、すなわち”仕事ができる人”は、こういったタイプが多いと言われています。
思考の過程に夢中になりやすいので、自分のストレスに気づきにくいことがあります。定期的に運動などでストレスを解消することをおすすめします。
「肺」の働きと”憂”・”悲”の関連性
「肺」は呼吸機能を中心に、水分バランスや体のバリア機能を持っており、これには鼻やのど、体毛なども関係します。
感受性が豊かで共感力の強い人は、肺に負担がかかりやすいとされています。憂うつな気分や悲しむことが続くと、肺の機能が低下しやすくなります。
気持ちが重くなり、呼吸も浅くなるため、悲しいときは感情を表現し、好きなことをして過ごすことが大切です。
「腎」の役割と”恐”・”驚”とのつながり
「腎」は私たちの生命の源で、生殖や成長、老化に関わる重要な臓器です。これには腎臓、膀胱、骨、骨髄も関連しています。
突然の驚きや恐れ、不安を感じると、これらの部位に影響が出やすいとされています。
特に恐怖は体のエネルギーを低下させ、日常のちょっとしたことでも不安を感じるようになることがあります。
恐れや緊張で突然の尿意を感じるのも、この「腎」の影響と考えられます。
”感情”と”五臓”【東洋医学の感情の捉え方】まとめ
日常の感情は、五臓の調子に影響されることもあります。
ここで紹介した7つの感情は、ストレスと深く関わっています。だからこそ、毎日の生活でストレスをため込まないように心がけることが肝心です。
現代人はストレスを感じやすい環境にありますが、それを乗り越えるためには適度な運動や趣味に打ち込むなど、自分なりのリラックス方法を見つけることが重要です。
感情は人間らしさの一部。その変動や揺れ動きは、自然なことです。しかし、感情は体の”エネルギー”とも繋がっていますので、そのバランスを大切にしましょう。
マイナスの感情の背後には、プラスの感情も潜んでいます。多くの人は自分の感情に気づいていないことが多いですが、五臓と感情の関連性を理解することで、自分の心の動きをより深く知ることができます。
自らの感情を受け入れ、変動する7つの感情に対応する力を養うことで、より豊かな人生を歩むことができます。