坐骨神経痛の原因となる主な病気
坐骨神経痛は、症状の一つであって、病名ではありません。
「咳」と同じであって、その「咳」の原因は、風邪なのか、肺炎なのか、肺の腫瘍なのか?ということです。
坐骨神経痛があるからといって、無闇にお尻を揉んだりしても良くなりません。
まずは適切な検査によって判断する必要があります。
坐骨神経痛を起こす原因となるのは主に、
坐骨神経痛を起こす原因
腰椎椎間板ヘルニア
腰部脊柱管狭窄症
梨状筋症候群
があります。
腰椎椎間板ヘルニアを鑑別するための徒手検査
腰椎椎間板ヘルニアの90%はL4/5、L5/S1の二つの椎間板で起こる。
L4/L5のヘルニアの場合、L5またはS1の神経根が障害される。
L5/S1のヘルニアではS1神経根が障害される。
なので、
ヘルニアが疑われる場合には、L4、L5、S1の神経症状を反射、知覚、筋力の3点から確認。
反射
膝蓋腱反射はL4(大腿四頭筋なのでL4)
アキレス腱反射はS1
L5を診る反射はなし。
知覚
知覚は脛骨稜の内側がL4、外側がL5。
母趾と第2趾の間はL5の固有領域。
足底はS1。
外果の下方はS1の固有領域。
筋力
筋力は足関節の内反がL4
足趾背屈がL5
足関節外反、底屈および足趾底屈がS1。
SLR(straight leg raising)70度までに症状が悪化が診られる
腰部脊柱管狭窄症の鑑別
病態
腰部脊柱管狭窄症は、加齢性変化が原因で、腰部の脊柱管や椎間孔が狭小化しています。
馬尾性の間欠跛行や神経根性疼痛が特徴的な症状で、悪化すれば膀胱直腸障害が現れます。
必ずしもレントゲンやMRIなどの画像所見と臨床症状が一致するわけではありません。
下肢の筋力低下、間欠跛行の増悪によって、日常生活に支障がでたり、膀胱直腸障害が現れた例では、手術が必要となることがあります。
一般的には腰椎椎弓切除による除圧術を行います。
すべり症などでは、固定のための手術もあります。
鑑別
【Grade I】
患者が中高齢であること。
下肢痛が、座位により改善あるいは緩和する場合は腰部脊柱管狭窄症の可能性が高い。
「開脚歩行」、「伸展位での殿部痛や下肢痛の増強」、「神経症状」が診られると狭窄症である可能性が高い。
歩行時に下肢痛が増強しなければ,腰部脊柱管狭窄症の可能性は低くなる。
【Grade B】
「腰部脊柱管狭窄診断サポートツール」を用いて鑑別
表1 腰部脊柱管狭窄診断サポートツール(ガイドラインより引用)
エ
ビデンスレベル(EV level)分類
該当するものをチェックし,割りあてられたスコアを合計する(マイナス数値は減算).
合計点数が7点以上の場合は,腰部脊柱管狭窄症である可能性が高い.
ABI: ankle brachial pressure index,足関節上腕血圧比
研究開始後に被験者登録が開始されているもの.
ATR: Achilles tendon reflex,アキレス腱反射
SLRテスト:straight leg raising test,下肢伸展挙上テスト
梨状筋症候群の鑑別
理学的診断として、いくつかの股関節周囲にストレスを加えて筋力を判定する徒手検査によって、痛みを誘発する診断法があります。
梨状筋症候群では、梨状筋部に硬結があることが多く、圧迫すると痛みが放散します。
「梨状筋症候群の誘発テスト」
「ペイステスト」
股関節を90度屈曲させた状態で椅子に座り、両膝を外に開かせ、その逆方向(内方向)に抵抗を加える。
痛みやシビレの増悪や筋力低下があれば陽性。
「フライバーグテスト」
仰向けで股関節と膝関節を屈曲させる。
膝の外側と足首の内側に力を加え、股関節を内旋、内転させる。
痛みやシビレの増悪があれば陽性。
「伏臥位内旋テスト(ヒブテスト)」
うつ伏せで膝関節を90度屈曲させる
足首を持って股関節を他動的に内旋させる。
痛みやシビレの憎悪があれば陽性。
「仰臥位内転テスト」
仰向けで股関節を60度~90度屈曲させる
膝を外側から内側に他動的に押して股関節を内転させる。
痛みやシビレが増悪すれば陽性。
「仰臥位外旋テスト」
仰向けで股関節を90度より深く屈曲させる
股関節をあぐらをかくように、外旋させる。
痛みやシビレが増悪すれば陽性。
「下肢伸展挙上テスト(SLR)]
仰向けで患側の下肢を伸ばしたまま他動的に挙上させる。
坐骨神経の圧迫があれば下肢に痛みやシビレが走り、可動性も低下します。
仰向けに寝た時に、梨状筋の緊張している側の足先が外を向いていることが多いです。
梨状筋部への局所麻酔薬の注射による症状の消失は、診断と共に治療にも有用です。最近では電気生理学的診断、CT、MRI、超音波検査も使用されることがあります。これらを駆使して総合的に診断します。