更年期には、女性ホルモンだけでなく、脳内の神経伝達物資(脳内ホルモン)の分泌のバランスも崩れてしまいます。
脳内では、神経細胞(ニューロン)が無数に繋がりあって、張り廻らされています。
神経細胞と神経細胞のつなぎ目には僅かな隙間があります。
神経伝達物質はその隙間に放出されて、前の細胞から後ろの細胞へ情報伝達が行なわれています。
ノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニンなどは、情動に影響を与える主な神経伝達物質です。
これらを総称して「モノアミン神経伝達物質」といいます。
ノルアドレナリン
副腎髄質から分泌されるホルモンの1つで、交感神経の情報伝達に関与しています。
ノルアドレナリンは、感情が激しく動いたり、強い肉体作業などで身体がストレスを受けたときに、交感神経の情報伝達物質として放出されたり、副腎髄質からホルモンとして放出される物質です。
交感神経の働きは優位になる
ノルアドレナリンが交感神経の情報伝達物質として放出されると、交感神経の活動が高まります。
その結果、血圧が上昇したり心拍数が上がったりして、体を活動に適した状態にします。
血圧も基礎代謝もあげる
副腎髄質ホルモンとして放出されると、主に血圧上昇と基礎代謝率の増加をもたらします。
通常ノルアドレナリンはその人のおかれている状況にあわせてバランスを保ちながら働いています。
ノルアドレナリンが不足すると
その働きが不均衡になると神経症やパニック症(パニック障害)・うつ病などを引き起こすといわれています。
研究が進み、この物質の作用を促進したり、阻害することでこういった精神疾患の治療に高い効果が上がることがわかってきています。
ノルアドレナリンが適度に分泌されている時、よい緊張感を持ち、やる気や集中力が高めることができます。
ストレスに対抗する力も強くなります。
逆に、過度のストレスが続くと、ノルアドレナリンが減少してしまいます。
不足すると、やる気、学習能力、集中力などが低下してしまい、無気力、無関心に陥り、悪化すると、抑うつ症状が現われてしまいます。
ドーパミン
神経伝達物質の一つで、体への刺激が快く感じる、快感と感じる原因となる脳内報酬系の活性化において中心的な役割を果たしています。
ドーパミンは神経伝達物質のひとつで、アミノ酸のチロシンから酵素の働きによって合成され、カテコールアミンと呼ばれる種類に属します。
ドーパミンが働く主な神経経路には黒質線条体路・中脳辺縁系路・中脳皮質路の3つがあります。
パーキンソン病、統合失調症とも関連
黒質線条体路はパーキンソン病と関連し、中脳辺縁系路と中脳皮質路は統合失調症と関連するとされています。
アルコールを飲むことによって快く感じるのは脳内の報酬系と呼ばれる神経系が活性化するためと考えられますが、この報酬系ではドパミンが中心的な役割を果たしています。
麻薬や覚醒剤と似た作用
アルコール・麻薬・覚せい剤などの依存を形成する薬物の多くはドパミンを活発にする作用があり、そのために報酬系が活性化するので、これらの薬物を使用すると快感をもたらすと考えられます。
ドーパミンが適度に分泌されると、脳は覚醒し、集中力が高まり、物事に前向きに取り組むことができます。
しかし、分泌が過剰になると、精神活動に混乱を招くことになります。
セロトニン
必須アミノ酸のトリプトファンから生合成される脳内の神経伝達物質のひとつです。
ドパミン・ノルアドレナリンをコントロールし精神を安定させる働きがあります。
視床下部や大脳基底核・延髄の縫線核などに多くみられます。
ドーパミンやノルアドレナリンのコントロール
上記のドパミンやノルアドレナリンなどのコントロールし、精神を安定させる働きがあります。
セロトニンの分泌が低下すると、ドパミン(喜び、快楽など)やノルアドレナリン(恐怖、驚きなど)、これら2つの働きが不安定になりバランスが乱れてしまいます。
更年期にはセロトニンも不足しがち
セロトニンの分泌が減少すると、やる気や集中力が低下し、イライラしやすい、些細なことでもキレやすくなったり、寝つきが悪い、不眠、気持ちが落ち込む、不安、うつ状態、パニックを引き起こす原因になります。
最近の研究では、セロトニンの低下には、女性ホルモンの分泌の減少が関係していることが判明しています。
更年期障害との関わりもわかってきています。
セロトニンが多すぎるリスク
うつ病の治療のためにセロトニンの作用を高めるような抗うつ剤を服用したりすると、脳内のセロトニン濃度が高まり過ぎることがあります。
セロトニンが多すぎても、発汗や心拍数の増えたり、汗を多くかいたり、頭痛、吐き気、筋肉の痙攣、ふるえ、錯乱、昏睡などの原因になってしまいます(セロトニン症候群)。
脳内の情報伝達物質は、バランスを保つことが重要で、増えすぎても不足しても、心身へ影響が現れてしまいます。