手の太陰肺経は、体内では肺の臓に属し大腸の腑に絡む。
体表では、胸、上肢前面の橈側(親指側)を走り、母指の橈側に至る。
その流注により、肺経の経穴は呼吸器系、上肢前面橈側の知覚・運動障害の治療に用いられる。
古典では、「陰は内を主る」という説があり、陰経の経穴は臓の疾患・虚証によく用いるのが一般的。
中府
部位: 前胸部、第1肋間と同じ高さ、鎖骨下窩の外側、前正中線の外方6寸。
取穴: 雲門の下方1寸。華蓋(任脈)から第1肋間に沿って外方6寸、鎖骨下窩で大胸筋の張ったところよりやや上方に取る。
肺の募穴
主治
咳や喉の痛み、胸が苦しい
肩こり、腕・指の痺れ痛み(頚腕神経障害、胸郭出口症候群)
解剖
解剖:大胸筋・小胸筋
筋枝:内側・外側胸筋神経
皮枝:鎖骨上神経
血管:胸肩峰動脈・外側胸動脈
漢字の意味
中 = 当たる 一致する
府 = 臓腑 →肺
肺のある所に一致する穴の意
別名 肺募:募穴は臓腑のある所で肺のある所当たる穴
施術
鍼:3分 5呼
灸:5壮
雲門
部位: 前胸部、鎖骨下窩の陥凹部、烏口突起の内方、前正中線の外方6寸。
取穴: 上肢を前に挙げて、鎖骨中央のやや外方下際にできる陥凹部に取る。
主治
咳や喉の痛み、胸が苦しい
肩こり、腕・指の痺れ痛み(頚腕神経障害、胸郭出口症候群)
解剖
解剖:大胸筋
筋枝:内側・外側胸筋神経
皮枝:鎖骨上神経
血管:胸肩峰動脈・外側胸動脈 深部:腋窩動脈が通る
漢字の意味
雲=天の気
門=出入り口
鎖骨より上を天の部という
天の部より経の気血の入ってくるところの穴の意
肺経の始まりの穴の意
施術
鍼:7分
灸:5壮
天府
部位: 上腕前外側、上腕二頭筋外側縁、腋窩横紋前端の下方3寸。
取穴: 腋窩横紋の前端と尺沢とを結ぶ線を3等分し、腋窩横紋前端から3分の1のところ、上腕二頭筋の外側縁に取る。
主治
上腕内側の知覚・運動障害
咳嗽、喘息
鼻血、喀血、吐血
急・慢性鼻炎
解剖
解剖:上腕二頭筋・上腕筋
筋枝:筋皮神経
皮枝:上外側上腕皮神経
血管:上腕動脈の枝
漢字の意味
天=上
府=臓腑
上の臓腑、肺は臓腑の天蓋をなすという。
一番上の臓腑である肺を表す。いわゆる肺の外方にある穴の意(侠白穴の上部)
施術
鍼:4分 3呼
灸:不可灸
侠白
部位: 上腕前外側、上腕二頭筋外側縁、腋窩横紋前端の下方4寸。
取穴: 天府の下方1寸で上腕二頭筋の外側縁に取る。
主治
上腕内側の知覚・運動障害
咳嗽、喘息、鼻血
急・慢性鼻炎
心臓部、胸部の痛み
解剖
解剖:上腕二頭筋・上腕筋
筋皮:筋皮神経
皮枝:上外側上腕皮神経
血管:上腕動脈の枝
漢字の意味
侠=挟む
白=五行の金・肺に属する色、肺を表す
肺を挟むところにある穴の意
施術
鍼:4分
灸:5壮
尺沢
部位: 肘前部、肘窩横紋上、上腕二頭筋腱外方の陥凹部。
取穴: 肘を軽く曲げて上腕二頭筋腱を緊張させ、その外側陥凹部、肘窩横紋上に取る。
合水穴
主治
咳嗽、喘息
胸部の苦み
感冒、咽喉炎
橈骨神経障害、肘関節障害
尿漏
解剖
解剖:上腕二頭筋(腱)・上腕筋
筋枝:筋皮神経
皮枝:外側前腕皮神経
血管:橈側反回動脈(橈骨動脈の枝)
漢字の意味
尺= 前腕部の長さ。
沢=水をたたえたところ。陥凹部
前腕部の長さの基準をなる肘窩の陥凹部にある穴の意。
尸(し)と乙(曲げた肱(ひじ)の象形)の合字で、人の前腕部を表す。
尸(し)=人
手首より肘の長さ。10寸
施術
鍼:3分 3呼
灸:3壮
孔最
部位: 前腕前外側、尺沢と太淵を結ぶ線上、手関節掌側横紋の上方7寸
取穴: 尺沢と太淵を結ぶ線の中点の上方1寸に取る。
郄穴
主治
発熱、咳、ぜんそく
鼻血、喀血
声が枯れる、咽喉炎
橈骨神経障害
解剖
解剖:腕橈骨筋・円回内筋
筋枝:橈骨神経・正中神経
皮枝:外側前腕皮神経
血管:橈骨動脈
漢字の意味
孔=大きな隙間
最=もっとも
最も大きな隙間
腕橈骨筋尺側の筋間の大きな間隙にある穴の意
施術
鍼:寸
灸:壮
列欠
部位: 前腕橈側、長母指外転筋腱と短母指伸筋腱の間、手関節掌側横紋の上方1寸5分。
取穴: 太淵の上方1寸5分で、母指を外転・伸展して長母指外転筋腱と短母指伸筋腱を緊張させ、その間の溝に取る。
絡穴、四総穴、八脈交会穴
主治
頭痛、歯痛、偏頭痛
首の痛み、寝違え
顔面神経麻痺、橈骨神経障害
喉の痛み、炎症
解剖
解剖:腕橈骨筋(腱)・長母指外転筋(腱)・短母指伸筋(腱)
筋枝:橈骨神経
皮枝:外側前腕皮神経
血管:橈骨動脈
漢字の意味
列=並ぶ
欠=破れる
骨の破れた部。すなわち本経に並んだところで骨の破れた部、いわゆる橈骨茎状突起の外側の陥隙(かけめ)にある穴の意
施術
鍼:3分 3呼
灸:5壮
経渠
部位: 前腕前外側、橈骨下端の橈側で外側に最も突出した部位と橈骨動脈の間、手関節掌側横紋の上方1寸。
取穴: 太淵の上方1寸で、橈骨下端の外側で最も高くなっているところと橈骨動脈との間に取る。
経金穴
主治
咳、ぜんそく
発熱、のどの痛み
胸背部の痛み
橈骨神経の知覚障害
解剖
解剖:腕橈骨筋(腱)・長母指外転筋(腱)
筋枝:橈骨神経
皮枝:外側前腕皮神経
血管:橈骨動脈
漢字の意味
経=山から一条になって流れる川
渠=溝
溝の山から一条になって流れる川。
橈骨と橈側手根屈筋の間の溝の中に、橈骨動脈が上から一条になって流れてきている状態のところにある穴の意
施術
鍼:3分 3呼
灸:不可灸
太淵
部位: 手関節前外側、橈骨茎状突起と舟状骨の間、長母指外転筋腱の尺側陥凹部。
取穴: 手関節前面横紋上で、橈骨動脈拍動部に取る。
原穴、兪土穴、脈会
主治
咳、ぜんそく
発熱、のどの炎症
胸背部の痛み
腕の関節の障害
解剖
解剖:
筋枝:
皮枝:外側前腕皮神経
血管:橈骨動脈
漢字の意味
太=大きい
淵=水の深く湛えた所、すなわち陥凹部。
大きく深い陥凹部。
橈骨と手根骨の間の大きく深く淵のような陥凹部にある穴の意。
※ 重要な水の渦巻く様、すなわち動脈部
重要な動脈部、いわゆる寸口の脈の寸脈部
脈会穴の意
施術
鍼:2分 2呼
灸:3壮
魚際
部位: 手掌、第1中手骨中点の橈側、赤白肉際。
取穴: 第1中手骨中点の外側、表裏の境目に取る。
滎火穴
主治
咳、ぜんそく
発熱、のどの痛み
母指球筋の知覚・運動障害
解剖
解剖:短母指外転筋・母指対立筋
筋枝:正中神経
皮枝:橈骨神経浅枝
血管:母指主動脈の枝
漢字の意味
魚=さかな
際=きわ
母指球部が魚の形に似ているので、この部を魚腹という。
いわゆる、魚腹のきわ、骨との界にある穴の意
施術
鍼:2分 3呼
灸:3壮
少商
部位: 母指、末節骨橈側、爪甲角の近位外方1分(指寸)、爪甲橈側縁の垂線と爪甲基底部の水平線との交点。
取穴: 母指爪根部近位縁に引いた線と外側縁に引いた線との交点に取る。
井木穴
主治
咳、ぜんそく、喉の炎症、扁桃体炎
声枯れ
失神
解剖
解剖:
筋枝:
皮枝:橈骨神経浅枝
血管:母指橈側動脈・母指主動脈の枝
漢字の意味
少=小さい、末端を表す
商=五音の一で肺を表す。
肺経の末端にある穴の意
施術
鍼:1分 1呼
灸:1壮