「お子さんがサッカーを習っていて、膝の前の部分が痛いと言い出して心配している。」
「オスグット病と周りから言われたけど、どういう治療がいいのか知りたい。」
この記事はサッカーを習っているお子さんがボールを蹴るときに膝の前が痛くて心配しているお母さんのために書きました。
サッカーボールを蹴ると膝が痛い!オスグットを疑う:中2男子の例
お子さんがサッカーを通っているご家庭も多いと思います。
練習の頻度は週に2回程度、試合に関しても月に2回以上というのが一般的だと思います。シーズンになると合宿や大会などがあり、練習も試合も頻度がもっと増えるかもしれません。 サッカーは対戦相手との競技ですので当然相手チームの選手との衝突もあります。
サッカーをしていると痛みや怪我が多いのも事実です。
特に小学校から高校生にかけて、成長期のお子さんの場合ウォーミングアップや運動後のクールダウンなどをきちんとしないと痛みや怪我が長引く恐れもあります。あなたのお子さんもサッカーや他のスポーツでも膝の痛みを訴える場合は参考にしていただいて、すぐに近くの専門家に相談するようお勧めします。
今回は中学校2年生のサッカー少年がボールを蹴る時に膝が痛いと訴えてきたケースをご紹介します。
今回の中学校2年生のサッカー少年は、中学校1年生の後半ぐらいからボールを受けるたびに右足の膝の下の部分に違和感を感じていました。特にコーチに相談することもなく、親にもなんとなく伝えていたという程度です。中学2年生になって春に練習量が増えたこともあり、右膝の下の違和感がどんどんと痛みに変わっていったそうです。
サッカーボールを蹴ると膝が痛い!オスグットを疑う:来院までの流れ
そのサッカー少年は中学校1年生の後半くらいからなんとなく右膝の下の辺りに違和感を感じていたそうです。中2になって痛くなるまではあまり深く考えなかったそうで、練習前後のストレッチも普段の準備体操に取り入れるぐらいの程度のものでした。
しかしその頃から膝の下に骨のような出っ張りがあることに「前からあったかな?」と言う軽い感じでは気づいていたそうです。中1の頃はサッカーの練習中や試合中ではなく、運動後に違和感を感じていました。その時はまだボールを蹴る時には違和感も痛みもなかったそうです。
中学校2年生になってレギュラー争いもう意識するようになって、練習量も増え、自宅に帰ってもリフティングや走り込みなどもするようになり、さらには試合に出る回数も増えるようになりました。
その頃から右膝の下の違和感が徐々に「痛み」として意識するようになったとのこと。特にその痛みは練習や試合後だけでなく、「ボールを蹴る」動作の時に痛みが出てきたそうです。その時になって初めてお母さんに相談したということでした。
心配になったお母さんが同じようにお子さんをサッカーに通わせているママ友に相談して当院に紹介されて来られました。
サッカーボールを蹴ると膝が痛い:オスグットの原因
当院に最初に来られた時は右膝の痛みのせいか、右足を少し引きずるように歩いていました。痛みを訴えている右膝の下の部分を見ると、写真のようなでっぱりがありました。
ボールを蹴る時に痛みを訴えるのもまさしくこの部分。詳しくは後ほど説明しますが、結論から言うとこの病態は「オスグッド病」「オスグッド・シュラッター病」と呼ばれる成長期にみられる骨の病気です。サッカーのようにボールを蹴るような、膝を曲げた状態から一気に伸ばす動作が多い成長期の骨に比較的多くみられる症状です。膝が痛いという症状はほぼこの「オスグッド・シュラッター病」だということはわかりましたが、痛みを感じながらの運動では他の筋肉や関節も痛めている可能性があるので、膝周りだけでなく足首、膝、股関節、背骨と全身のチェックをします。
この中二のサッカー少年の場合、オスグッド病に加えて全身の硬さがありました。
特に股関節と足首に関しては両側とも硬いと評価しました。中2のサッカー少年曰く、「小学校の頃からストレッチは苦手だった」そうです。オスグッド病の場合、膝の周りの治療だけでは良くならないことが多いです。一般的な治療法としては大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)をマッサージしたりストレッチを指導したりするだけです。
後はテーピングやサポーターを勧められることが多いです。
当院では膝周りの治療だけでなく、股関節、足首、腰、背骨の関節の動きと筋肉の異常の治療範囲に入れています。
膝とは全く関係のないような部分でも本当の原因があることが多いです。この中二のサッカー少年の場合は、ボールを蹴る際の「足首と股関節の連動」が悪いという評価でした。膝の痛みのせいで正座ができない、しゃがめないという症状もありましたが、体が硬いので「そんなもんだ」と思っていたそうです。
サッカーボールを蹴ると膝が痛い:オスグットの治療方針
もう少し専門的な話をさせていただきます。
オスグッド病の直接的な原因は、 成長期の骨がまだ出来上がっていない「柔らかい状態」の時にボールを蹴るような動作を何度もすることで、太ももの筋肉の付着部である「膝の下の骨」が引っ張られ、膨れ上がる ことです。だから大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)を緩めることは効果的です。
しかし筋肉の硬さだけではなく、さらに重要なのが仙腸関節と股関節の連動性です。仙腸関節とは骨盤の真ん中あたり左右にある関節のことです(図)オスグッド病になりやすい成長期のお子さんは、この仙腸関節と股関節の動きが悪い傾向があります。
当院では筋肉だけでなく、これらの関節へのアプローチをして痛みの早期改善を図っています。
サッカーでボールを蹴る時に痛みを感じた時にしておきたいこと
まずはお父さんやお母さんが気をつけてあげてください。
今回のケースは中2の少年でしたが、さらに小さい子であれば「痛み」に関して意識が大人よりも低いことがあります。
多少痛くても放っておく、親に言わないということも見受けられます。
そうすることで早期に発見することができます。
早期発見することで 予防や治癒の効果が高まります。
そして違和感や痛みを訴えるのであれば膝や痛みがある部分へかかる負担をできるだけ軽くするために運動前には特に時間を取ってウォーミングアップ、ストレッチを心がけましょう。練習中や試合中でも痛みが増すようであればすぐに監督やコーチに入ってベンチに下がりましょう。運動後には10分から15分の患部へのアイシングが必要です。
アイシングは運動後の炎症を抑えるために効果的ですので、痛みを改善していくのが実感できると思います。ただし長期間痛みを我慢しながらのプレーやアイシングをしても痛みが改善しないという場合は練習や試合を中止しないと治癒しないケースもあります。
できるだけそうならないために、早めの予防をお勧めします。
サッカーボールを蹴る時以外に膝が痛い場合
子供がサッカーでボールを蹴るときに膝が痛い:怪我
膝の痛み①ジャンパー膝
膝の痛み②膝前十字靭帯(ぜんじゅうじじんたい)損傷
膝の痛み③内側側副靭帯(ないそくそくふくじんたい)損傷
膝の痛み④打撲(だぼく)
膝が痛くなる怪我は他にもありますので、これらにも注意が必要です。
詳しくは別の記事にて紹介していますので、参考になさってください。成長期の痛みは時期によって痛みを訴える部分が変わるのが特徴です。小学校2年生から5年生にかけては「かかと」、5年生から中学校1年生には「膝」、中学から高校生にかけては「腰」に痛みを訴えて来院することが多いです。
サッカーボールを蹴ると膝が痛い「オスグット」:ボールを蹴れなくなる?
この中二のサッカー少年の場合は、 練習熱心で誰よりもボールを多く蹴った結果痛みが発生してしまいました。それだけに「なんで自分だけ?」と不安がっていました。
しかし当院に治療に来られるオスグッド病の患者さんの9割以上が「体が硬い」という共通点を持っています。
膝以外の体の硬さを改善することでオスグッド病でも1ヶ月から2ヶ月の間で痛みも回復していきます。ただし重症な場合や女子に起こるオスグッド病では治療回数が多くなる傾向があります。また激しい練習を続けることによって回復が遅くなる傾向もあります。
サッカーボールを蹴ると膝が痛い「オスグット」:まとめ
この中二のサッカー少年の場合は症状がそこまで悪くなく、約1ヶ月、5回の施術で通常通りの練習や試合に戻ることができました。
最初は正座もできないくらい膝が曲がらなかった状態が徐々に曲がるようになっていきました。 痛みが再発しないように予防目的の「セルフケア」を指導しました。体が出来上がっていない子供だからこそ「自分の体は自分でケアをする」という意識を持ってもらうようにしています。
サッカー以外にオスグッド病で来られた患者さんは、野球のキャッチャー、空手、陸上、テニス、バドミントン、バスケットと非常に多岐に渡っていますので、一度お子さんに確認して上げてください。