子供を持つ多くの親にとって、気になるのが身長の伸びるかどうか。
僕も身長163cmで低い方なので、思春期にはかなり悩みました。
今、3人の子供に恵まれて、この子らには身長が伸びないことで「コンプレックス」を感じて欲しくないです。
しかも、3人ともスポーツに打ち込んでいるので、できれば身長が高くなるようにと願っています。
ほとんどのスポーツ競技において、身長が高い方が有利に働きますので、自分の子供が列に並んで半分より前の方にいてると、つい自分を責めたくなります。
仕事柄、栄養に詳しくなりました。
そのおかげで今の所3人ともクラスの列の後ろから2番目から3番目にいます。このまま身長を伸ばしてくれたらと心から願います。
子供の背を伸ばすなら「遺伝」で諦めないこと
身長が伸びる、背が高くなるというのは、確かに、遺伝の影響も大きいです。
しかし、遺伝だけが全てではありません。遺伝以外にも身体への様々な刺激により、身長が伸びることは科学的に証明されています。
その刺激の中には、栄養、運動、睡眠などがあります。
この記事では栄養についてお話を進めていきます。
子供の背を伸ばすなら親が環境を作ってあげる
お子さんの身長が伸びないのは、食生活によるところも大きいです。
子供の身長が伸びることを妨げてしまわないような、食事を組み立ててあげて、サポートしていきましょう。
では、「子供の身長を伸ばすための栄養」とは一体どういうものなのでしょうか?それにはまず、子供の身長が伸びる仕組みを知っておきましょう。
子供の背が伸びるしくみとは?
子供の身長が伸びているということは、骨が伸びていることを意味します。
身長と骨が伸びる仕組み「骨端線」
人の体を構成する骨はおおよそ200個あります。その中でも長い骨を「長管骨」と言います。子供のうちはこの長い骨(「長管骨」)がぐんぐん伸びて背が伸びます。
この長い骨の両端には「骨端線(こったんせん)」という軟骨の部分があります。
この「骨端線」は成長軟骨板(せいちょうなんこつばん)と呼ばれ、体重や運動による刺激が加わると、硬く(骨化)なり、骨が伸びていきます。
成長するにつれ、この「骨端線」が閉じていくので、徐々に身長の伸びが少なくなってしまい、大人になると止まってしまいます。
背を伸ばすホルモンとは?
骨端線が伸びるには、ここにかかる圧力や刺激が必要と言いましたが、さらに効率よく伸ばすためには、ホルモンの分泌が関わっています。
数多くあるホルモンの中でも、「ソマトメジンC(IGF-I)」というホルモンが重要になります。このホルモンは肝臓から分泌されるホルモンで、骨を伸ばすためには不可欠です。
さらにこの骨を伸ばすためのホルモンである「ソマトメジンC」を肝臓で作られるようにするためには「成長ホルモン」が必要になります。
成長ホルモンを分泌させるための3つの生活習慣とは?
骨を伸ばすためには、上述したように「ソマトメジンC」を分泌させる環境作りが必要です。「ソマトメジンC」を増やすためには「成長ホルモン」が沢山分泌されるようにしないといけません。
成長ホルモンをバンバン分泌するための3つのポイント
成長ホルモン
①成長ホルモンの材料となる栄養たっぷりの食事を心がける
②成長ホルモンは日中運動することで分泌が促進
③就寝直後90分間に熟睡すること
今回は①の成長ホルモンの材料となる栄養についてお話しします。
骨を伸ばすため前に考えておかないといけないこと
子供の成長には多くの栄養素が関与しています。成長期に「これをやれば絶対に身長が伸びる」というようなサプリや栄養はありません。先ほども言いましたが、遺伝や環境にもよります。
しかし、子供の身長を伸ばしたいと考えるなら、必要な栄養素を知っておくべきです。
身長が伸びる伸びない以前に、健康体でいることが何よりですので、まずはタンパク質中心の献立を組みましょう。その上で、脂質、糖質の摂取量を計算します。
その際には、運動のパフォーマンス、勉強への集中力、さらに運動量や体重、体脂肪率など大まかでいいので、把握しながら実践していきましょう。
身長を伸ばすために必要な栄養素とは?
健康を第一と考えた上で、骨、もしくは身長を伸ばすための栄養は以下の通りです。
下の示す栄養素は身長を伸ばすために必要と考えられるものです。
目的は大きく3つに分けられます。
栄養を摂る3つの目的
成長ホルモンの原料になるもの
成長ホルモンの分泌を促進させるもの
骨を強化させるもの
身長を伸ばすために必要な栄養素
タンパク質(特にグルタミン、アルギニン、グリシン、プロリン、トリプトファン)
ビタミンC
亜鉛
カルシウム
マグネシウム
ビタミンD
ビタミンK
背を伸ばす「タンパク質」
身長を伸ばすためだけでなく、心身を健康に保つために必要な栄養が「タンパク質」です。肉や魚・大豆などに豊富に含まれているイメージですが、肉や魚でも含有量は2割程度で、大豆では3割です。
しかも大豆などに含まれるタンパク質はプロテインスコアが低く、他の食べ物で補充しないといけません。
プロテインスコアに関してはこちら
ダイエット成功のための筋肉も美容も維持するタンパク質の摂り方
骨を伸ばすために、なぜタンパク質が必要かというと、タンパク質は消化分解されて「アミノ酸」変わります。
アミノ酸の形に消化されて、初めて体内に吸収されます。
このアミノ酸の中でもグルタミン、アルギニン、グリシン、プロリン、トリプトファンと言ったものが必要になります。
身長を伸ばすためのアミノ酸「トリプトファン」
骨端線の軟骨部分にはコラーゲンが豊富あり、このコラーゲンが作られる際の材料はトリプトファンというアミノ酸とビタミンCが主になります。
しかも、このトリプトファンは睡眠を深くするために必要な「セロトニン」という脳内のホルモンの材料にもなりますので、「寝る子は育つ」は決して迷信ではありません。
身長を伸ばすためのアミノ酸「アルギニン」
アルギニンは「成長ホルモン」を分泌するために必要なアミノ酸です。
それだけでなく、疲労回復を早めたり、腎臓の働きを助けたりします。
さらに、「アルギニン」は身体の中で「NO(一酸化窒素)」を作り出します。この一酸化窒素が、体に作られることで血流を良くしたり、骨を強くしたり、肝臓を強くしたり、筋肉を増やしたりと沢山の作用が期待できます。
身長を伸ばすためのアミノ酸「グルタミン」
グルタミン摂取することで、「成長ホルモン」の分泌が促進します。
グルタミンを摂取して、ジャンプ系の運動を多く取り入れると、成長に好影響がある可能性が指摘されています。
他に疲労しにくい身体を作る、やる気がでるなどと良い影響があります。
身長を伸ばすためのアミノ酸「グリシン」「プロリン」
「グリシン」と「プロリン」というアミノ酸は「コラーゲン」を作る際の主な原料になります。
「コラーゲン」は、骨を作る際の大切な基礎になります。
どちらも必須アミノ酸ではありませんが、「グリシン」「プロリン」を多めに摂取すると、身体の中でコラーゲンができやすくなります。
身長を伸ばすだけでなく、スポーツをするお子さんに
筋肉を使うと「分解と再形成」が進みます。運動など激しい動きをすると「分解」が進む、と同時に「再形成」も進みますが、その際に必要なのでアミノ酸です。
アミノ酸の原料はタンパク質です。
だから、全てのお子さんにタンパク質は必要なのですが、運動をしていればさらに多くのタンパク質が必要になります。
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身長を伸ばす「ビタミンC」
「骨端線」に多い軟骨や骨の基礎になる「コラーゲン」はビタミンCがないと作られません。
上記のように「タンパク質」と「ビタミンC」の両方とも十分にあることで「骨の成長」が促進されます。
身長を伸ばす「亜鉛」
亜鉛はインスリンの材料になります。インスリンは血糖値を下げるホルモンとして有名ですが、働きはそれだけではありません。
体内に摂取したアミノ酸を筋肉などの体内に取り込む際にも、インスリンが働きます。
だから、せっかく摂取したタンパク質を有効に使うためにはインスリンも分泌させないといけません。そのための材料として「亜鉛」が必要となります。
普通に食事していれば不足することはありませんが、貝類、レバーなどに多く含まれるので食事に取り入れてください。
亜鉛が不足すると味がわからなくなることもあり、食欲の減退にもつながりかねません。
身長を伸ばす「カルシウム」
カルシウムは骨を伸ばすためには働きませんが、骨を強くするためには必要です。
骨の基礎であるコラーゲンだけで、ふにゃふにゃの状態。カルシウムが沈着することで、骨が頑丈になっていきます。身長を伸ばすためには、土台となる骨の強度も必要です。
「骨端線」に刺激や他の栄養が十分であっても、カルシウムが不足していると身長が伸びなくなってしまいます。
だからと言って、牛乳も飲みすぎると健康に害を及ぼします。厚労省によると成長期には1000mg程度のカルシウムの摂取が推奨されています。
カルシウムは汗と一緒に流れてしまうので、運動をしているお子さんには特に注意して摂取させてあげたほうがいいと思います。
牛乳200mlでおおよそ200mgのカルシウムが含まれます。
身長を伸ばす「マグネシウム」
マグネシウムは、カルシウムの吸収と代謝を調整する働きがあります。
カルシウムと同様に不足しがちな栄養素です。マグネシウムとカルシウムは同じ量だけ必要とされています。
だから牛乳にはマグネシウムは200ml中に20mgしか含まれませんので、牛乳の飲み過ぎはカルシウムとマグネシウムのバランスを崩してしまいます。
骨を強くしているつもりでも、逆に、骨が弱くなってしまっている可能性もあります。
マグネシウムが多く含まれる食品(100gあたり)
なまこ 160mg、油揚げ 130mg、ゆで大豆 110mg、あさり 100mg、あおさのりなど乾燥させた海藻類にも多く含まれています。
身長を伸ばす「ビタミンD」
カルシウムは吸収率の低い栄養素なのですが、ビタミンDはこの吸収を助けてくれます。
ビタミンDも普通に食事している限りは不足する栄養素でありませんが、きのこ類に多く服mれているので、意識して食事に組み込んであげてください。
さらに日光に当たると体内にビタミンDが増えますので、お子さんが外であまり遊ばないとか運動していても室内の競技であるとかの場合は、積極的に外で遊ばせてあげてください。
インフルエンザ予防と骨を強くするビタミンを1番多く含む食べ物は?
身長を伸ばす「ビタミンK」
ビタミンKは骨にあるタンパク質の活性を高めることで、カルシウムの流出を防ぎます。さらにカルシウムが骨に吸収されるのを助けます。
この作用を生かして、骨粗鬆症の薬として処方されることもあります。
ビタミンKを多く含む食品には納豆や海藻類があります。
【ダイエットのビタミンの取り方】ダイエット効くビタミンの取り方
子供の身長を伸ばすための「まとめ」
子供の身長が伸びるためには、「成長ホルモン」、「性ホルモン」、「栄養」、「心身共にかかるストレス」などが関わっています。
特に、男の子だと陰毛が生えてきたり、女の子だと乳房が発達してくる「二次性徴」が見られる頃に、急激に身長が伸びて、そのまま高くなっていくものと思いがちです。
しかし、「二次性徴」が見られる頃に140cm以下の場合、将来的に平均身長よりも低くなってしまう可能性が高くなってしまいます。
お子さんの身長を伸ばしたいとお考えなら、親にできることは「環境を整えてあげること」しかありません。
運動させる、栄養を考えて摂取するなど自分でコントロール可能な範囲での努力が必要になります。
そうして初めて「成長ホルモン」や「性ホルモン」が分泌されやすい環境が整います。環境は整えることはできますが、ホルモンの分泌や骨の成長は、自分でコントロール不可能な要因です。
だからこそ、せめて「ホルモンが分泌されやすい環境」や「ホルモンの材料となる栄養」を考えてあげましょう。
「復習」子供の身長を伸ばす方法
「身長が伸びる」は「骨が伸びる」
身長を伸ばす栄養素がある
タンパク質、亜鉛、ビタミンC、カルシウム、マグネシウム、ビタミンD、ビタミンKなどが必要。
骨を直接伸ばすことは不可能、環境を作ってあげる