「起立性調節障害でお家でお母さんがしてあげられること」
食事、運動、睡眠の改善方法のひとつとして読んでいただければ幸いです。
不登校の原因は自律神経の乱れ
起立性調節障害(ODと略します)は、思春期に起こりやすい自律神経機能失調と考えられています。成長過程の変化はとても大きく、自律神経の調節が追いつかないこともあります。起立性調節障害はの原因はこの成長による自律神経のアンバランス状態とされています。
お子さんがODに罹ってしまうと、ひどい場合には、立ち上がるときに血圧がひどく低下して脳貧血を起こすこともあります。なかには、血圧に異常がないものもあります。
傾向として、新しい環境や人間関係で気を使いすぎて、ストレスをためやすいお子さんに起こりやすい傾向があります。
起立性調節障害の3割は「不登校」を症状に持ちます。
治療法はあるの?
病院にて診断されると医師の判断により、薬物による治療も行われます。
日本小児心身医学会によるとお子さんが不登校で受診し、『起立性調節障害』と診断される際の治療方針に言及していますので詳しくはごらんになってください。
ここで、注目したいのは「非薬物療法」について。
以下引用させていただきます。
・坐位や臥位から起立するときには、頭位を下げてゆっくり起立する。
・静止状態の起立保持は、1-2分以上続けない。短時間での起立でも足をクロスする。
・水分摂取は1日1.5-2リットル、塩分を多めにとる。
・毎日30分程度の歩行を行い、筋力低下を防ぐ。
・眠くなくても就床が遅くならないようにする。
とあります。
この「非薬物療法」に加えて、不登校の原因である「起立性調節障害」を改善するための、当院での取り組みをご紹介しますね。
起立性調節障害と診断されてお家でできること
上記の治療方針を簡単にまとめると、「水をたくさん飲んで、少しの運動をして、質の良い睡眠を取りなさい」ということだともいます。要するに、生活習慣を改めなさいということだと思います。
当院ではこの3つのポイントをもっと深く、掘り下げてみたいと思います。
水をたくさん飲む
「水を1日に2リットル程度飲むこと」は、水を飲むことは血液の循環量を増やすことに繋がります。
血液の流れが増えると、下がり気味の血圧が上がり、全身に届く血液が増えます。そして、脳内へも栄養が行き渡りやすくなります。
ここで考えてみたいのはなぜ血流量を増やさないといけないかということです。「起立性調節障害」の原因は、自律神経のバランスの崩れによるものです。自律神経の調整は脳内の伝達物質であるアドレナリンもしくはノルアドレナリンによって調整されます。
この二つの脳内伝達物質は、 アミノ酸から合成されます。アミノ酸とは食べ物で言うとタンパク質を構成するものです。
当院に来られる起立性調節障害と診断されたお子さんの多くは食べ物が偏っていることがとても多いです。
子供が食べているもの
白米
菓子パン
スナック菓子
パスタ
うどん
ポテトフライ
ハンバーガー
ピザ
インスタントラーメン
カレーライス
寿司
炭酸飲料 など
などです。
ここで注意しないといけないことは含まれる「栄養素」。
どれもが「炭水化物」や「砂糖」でできています。しかも、タンパク質がほとんど含まれません。
前述のように自律神経を調整する二つのホルモン「アドレナリン」と「ノルアドレナリン」の原料はタンパク質です。普段お子さんが食べているものでは、タンパク質が不足する傾向にあります。
せっかく血流を増やすためにお水をたくさん飲んでいたとしても、血液中に栄養が足りていないと無駄な努力になりかねません。だから、お水を飲むのと同時に、お肉や魚、大豆製品を積極的に食事に取り入れてください。そして、白米やうどんなどの炭水化物の量を極力減らすようにしてください。炭水化物を減らす理由については後ほど述べさせていただきます。
自律神経のバランスを整えようとすれば、神経の情報を伝えるための栄養素があるということを理解してください。
運動に関して
病院での指導では軽く散歩などとありますがもう一つ付け加えて欲しいことがあります。それは日光が当たる時間帯に歩くということ。
「起立性調節障害」になると、夜更かしをし朝起きれない、日中も外に出ないという悪循環に陥ってしまいます。そうすると、日中に太陽の光を浴びないという生活が続いてしまいます。
人は日光を浴びることで「日概リズム」を調整します。日概リズムとは人の体に本来備わっている24時間の体内時計のことを言います。簡単に言うと「太陽が昇って明るいうちに活動する、日が落ちて暗くなると休息する」という生活リズム。
この「日概リズム」は脳内の伝達物質である「ドーパミン」によって調整されています。24時間暗闇の中で生活すると「日概リズム」は崩れてしまいます。
すなわち、夜更かしをして日中は家にこもっているという生活をしていると朝起きて夜寝るという生活がしにくくなってしまいます。「ドーパミン」は自律神経の調整にも関わっていますので、日中は日光に当たって少し体を動かすということが重要になります。
外に出て体を動かすことは筋力の維持だけでなく、日光に当たるという目的もあるということを理解しておいてください。さらに体を動かすと筋肉の動きによって毛細血管の血流もアップしますので、脳内への血流もアップします。
睡眠について
「不登校」や「起立性調節障害」だけでなくメンタルの悩み、例えば大人の鬱やパニックでも初期の症状として考えられるのが「不眠」です。お子さんが夜2時や3時を回っても眠れないということが続くのであれば、注意が必要です。
「不眠」といっても、長く眠るということだけでなく、その質も重要です。病院での治療方針では眠くなくても早く就寝するように指導されるかもしれません。
布団にはいっても、眠れなければ意味がないので、睡眠の質を高めるためのコツがあります。
「睡眠の質を高めるコツ」 とは
お子さんが赤ちゃんの頃のこと思い出してください。手や足の体温が高くなると眠くなってきた前兆でしたよね。それと同じで思春期でも大人でも体温を高くしてあげると深い眠りを誘導することができます。できるだけ睡眠薬などは使いたくないですもんね。
体温を高くする方法はもちろんお風呂の入り方になります。就寝する時間をある程度決めておいて、そのタイミングの90分前に入るようにします。この時のお風呂の温度は42°ぐらいの適温で結構です。
入浴後90分で睡眠を深くするための体温になりやすくなります。これは 「『スタンフォード式最高の睡眠法』西野精治著」で紹介されている根拠ある方法です。
睡眠まで時間が短いなら温度を高めにしてさっと入るといいです。
睡眠の質が高ければ高いほど、睡眠中に分泌される「成長ホルモン」の分泌も増加します。「成長ホルモン」がきちんと分泌されることによって肉体や精神の代謝が整えることができます。結果として、活動中に摂取した栄養を消化吸収し、血流を増やすことができ、心身の疲れを回復することができます。これらの睡眠の効果は自律神経のバランスも整えることができます。
起立性調節障害の原因は自律神経の乱れ
起立性調節障害の改善には自律神経のバランスを整えることが根本的な解決につながります。医師の処方通りに薬を飲みながら、最短で薬に頼らない生活に戻してあげられるかを考えないといけません。
「日本小児心身医学会」でも治療の一環として生活習慣の見直しをあげています。お子さんのことですから、薬にできるだけ頼らないように、できるだけ早く直してあげたいと思うのは親心だと思います。
だからこそ、お家でできることを焦らずにサポートしてあげるようにしましょ。
そのための三つのポイントとして挙げられるのが、「食事」「運動」「睡眠」です。
まとめ
起立性調節障害の症状として「不登校」がある。
起立性調節障害の原因は自律神経のみだれ。
自律神経はホルモンの分泌で調節される。
自律神経のホルモンはタンパク質(アミノ酸)から作られる。
糖質の過剰摂取は自律神経のバランスを崩す。
栄養、運動、睡眠の質を高めれば自律神経が整いやすくなる。