「急に動悸がして、息が苦しくなります」
「気分が落ち込み、何をしても疲れます」
「病院ではパニック症かもしれないと言われましたが、鉄不足も関係しますか?」
カウンセリングで、このようなご相談を受けることがあります。
インターネットでは、「うつやパニックは鉄不足が原因だった」という情報を見かけることがあります。
確かに、鉄が不足すると疲労感、息切れ、動悸、めまい、集中力低下、気分の落ち込みなどが起こり、うつや不安に似た症状が出ることがあります。
しかし、うつ病やパニック症の原因を、すべて鉄不足だけで説明することはできません。
鉄不足が症状を強めている方もいれば、鉄の状態とは別に精神的な治療が必要な方もいます。両方が重なっている場合もあります。
今回は、鉄不足と心身の症状の関係、検査で確認したい項目、鉄サプリを自己判断で飲む際の注意点についてお伝えします。
鉄不足が心と身体へ影響する理由
鉄は、赤血球に含まれるヘモグロビンを作るために必要な栄養素です。
ヘモグロビンは、肺で取り込んだ酸素を全身へ運ぶ役割があります。鉄が不足してヘモグロビンが少なくなると、身体へ酸素を十分に運びにくくなり、疲労感、息切れ、動悸、めまいなどが出やすくなります。
鉄は、酸素を運ぶ働きだけに関係しているわけではありません。細胞がエネルギーを作る過程や、脳の神経伝達物質に関係する反応にも必要です。
そのため鉄不足では、身体がだるい、頭が働かない、集中できない、気分が落ち込む、イライラするといった症状が重なることがあります。
こうした症状だけを見ると、うつ病や自律神経の不調と区別しにくい場合があります。
ただし、鉄不足があるからといって、必ずうつ病やパニック症になるわけではありません。研究で関連が示されていても、すべての方で鉄不足が直接の原因と証明されたわけではない点に注意が必要です。
鉄不足で見られることがある症状
次のような症状が重なっていないか確認してみてください。
- 休んでも疲れが取れない
- 階段や坂道で息が切れる
- 急に心臓がドキドキする
- 立ち上がるとふらつく
- 頭痛や頭の重さが続く
- 集中力が落ちた
- 朝起きるのがつらい
- 顔色が悪いと言われる
- 爪が割れやすい
- 氷を無性に食べたくなる
- 月経量が多い
- 食事量が少ない
これらは鉄不足で見られることがありますが、鉄不足だけに特有の症状ではありません。
甲状腺疾患、心臓や呼吸器の病気、睡眠不足、感染症、更年期、低血糖、薬の影響などでも似た症状が起こります。
また、突然の激しい胸痛、意識を失う、強い呼吸困難、片側の手足が動かしにくいといった症状がある場合は、鉄不足と自己判断せず、速やかに医療機関を受診してください。
うつ病やパニック症を鉄不足だけで説明できない理由
うつ病では、気分の落ち込み、興味や喜びの低下、睡眠や食欲の変化、強い疲労感、自責感、集中力低下などが続きます。
パニック症では、突然の激しい動悸、息苦しさ、発汗、震え、めまい、「このまま死ぬのではないか」という強い恐怖などが現れます。
これらには、脳の働き、心理的負担、生活環境、体質、過去の経験、睡眠、身体の病気など、複数の要因が関係します。
鉄不足による動悸や息切れが、パニック発作に似て感じられることはあります。しかし、鉄を補えばすべてのパニック症状がなくなるとは限りません。
反対に、精神的な不調と診断された方に鉄不足が重なっていることもあります。
大切なのは、「身体の問題か、心の問題か」と二つに分けることではありません。精神的な評価を受けながら、貧血や甲状腺など身体面の確認も行うことです。
鉄不足を放置するとどうなる?
鉄不足が続くと、疲労感や息切れによって身体を動かす機会が減ることがあります。
動くとしんどいため外出を控え、人と会う機会が減り、さらに気分が落ち込みやすくなる場合もあります。
集中力が低下すると仕事や家事が進みにくくなり、「自分は何もできない」と感じてしまう方もいます。
月経量の多い女性では、少しずつ鉄を失う状態が続き、本人も気づかないまま不足が進むことがあります。
ただし、気分の落ち込みやパニック発作を放置し、鉄の検査だけで様子を見ることもおすすめできません。
死にたい気持ちがある、眠れない状態が続く、仕事や家事ができない、外出できないほど不安が強い場合は、早めに精神科、心療内科、かかりつけ医などへ相談してください。
鉄不足が気になる方のセルフケア
セルフケア1 血液検査で確認する
鉄不足は、症状だけでは判断できません。
一般的には、ヘモグロビン、赤血球、平均赤血球容積、血清鉄、フェリチンなどを組み合わせて確認します。
フェリチンは、身体に蓄えられている鉄の状態を考える際に使われる検査項目です。ヘモグロビンが基準範囲でも、貯蔵鉄が少なくなっている場合があります。
ただし、フェリチンは炎症や感染症、肝臓の状態などでも変化します。数値一つだけで判断せず、医師に全体を評価してもらってください。
月経量が多い方は、婦人科疾患が背景にないか確認することも大切です。
セルフケア2 鉄を含む食品を組み合わせる
鉄を含む食品には、赤身の肉、レバー、かつお、まぐろ、あさり、大豆製品、小松菜などがあります。
肉や魚に含まれる鉄は、植物性食品に含まれる鉄より吸収されやすい傾向があります。
植物性食品から取る場合は、肉や魚、ビタミンCを含む野菜や果物と組み合わせると、吸収を助けることがあります。
一つの食品だけを大量に食べるのではなく、主食、主菜、副菜をそろえることが基本です。
レバーには鉄が含まれますが、ビタミンAも多いため、毎日大量に食べる方法はおすすめできません。特に妊娠中は注意が必要です。
セルフケア3 鉄サプリを自己判断で飲み続けない
鉄は不足している方には必要ですが、多く取るほど健康になる栄養素ではありません。
鉄剤や鉄サプリでは、吐き気、胃の不快感、便秘、下痢、便が黒くなるなどの変化が起こることがあります。
また、鉄が不足した原因を確認せずに補うと、月経過多や消化管からの出血などを見逃す可能性があります。
男性や閉経後の女性で鉄欠乏が確認された場合は、食事不足だけではなく、消化管からの出血などについて医療機関で調べることがあります。
検査を受けずに高用量の鉄サプリを長期間飲み続けるのではなく、医師や薬剤師へ相談してください。
当院で大切にしている考え方
杉本接骨鍼灸院では、うつやパニックのような症状がある方に対して、「鉄不足が原因です」と言い切ることはありません。
まず、動悸や息苦しさがいつ起こるのか、月経量は多くないか、食事は取れているか、眠れているか、医療機関でどのような検査を受けたかを確認します。
鉄不足を疑う症状がある場合には、内科や婦人科などで血液検査を受けるようお伝えします。
一方で、精神科や心療内科へ通院している方に、薬をやめて鉄だけを取るよう勧めることはありません。治療中の薬は自己判断で中止せず、主治医の指示に従ってください。
鍼や整体では、強い緊張、肩や背中の硬さ、呼吸の浅さなどを確認し、その日の状態に合わせて施術します。
ただし、鍼や整体はうつ病やパニック症の診断や標準治療に代わるものではありません。
身体の緊張を整える施術、食事や睡眠の見直し、医療機関での検査や治療を、必要に応じて組み合わせることが大切です。
まとめ
鉄不足では、疲労感、動悸、息切れ、めまい、集中力低下、気分の落ち込みなどが起こることがあります。
そのため、うつやパニックに似た症状の背景に、鉄不足が隠れている場合はあります。
しかし、うつ病やパニック症のすべてが鉄不足によって起こるわけではありません。
「鉄を飲めば治る」と判断せず、血液検査で鉄の状態を確認し、精神的な症状についても適切な診断を受けることが大切です。
月経量が多い、疲れやすい、息切れや動悸がある方は、ヘモグロビンだけでなく、必要に応じてフェリチンなども医師へ相談してください。
強い気分の落ち込み、外出できないほどの不安、死にたい気持ちがある場合は、栄養の見直しだけで様子を見ず、早めに精神科、心療内科、かかりつけ医へ相談してください。
身体の緊張や睡眠、食生活について整理したい方は、公式LINEからお気軽にご相談ください。
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