非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の中には、ロキソニン(ロキソプロフェン)のような薬品も含まれます。
これらの薬は、一般的には炎症、痛み、発熱を軽減するために使用されます。
その作用機序は主に、シクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素を阻害することによってプロスタグランジンという物質の産生を抑えることで、炎症反応や痛みの発生を抑えます。
しかし、一部のNSAIDは心血管イベントのリスクを増加させる可能性が指摘されています。
具体的には、心筋梗塞や脳卒中のリスクが増加すると言われています。
その機序については完全には解明されていませんが、以下のような説が提唱されています。
- プロスタグランジンのバランスの変化:
NSAIDは、特にCOX-2を選択的に阻害するものが、血管を広げて血流を改善する作用を持つプロスタグランジン(PGE2とPGI2)の生成を抑制します。
一方で、血小板の凝集を促進するプロスタグランジン(TXA2)の生成はCOX-1によるものが主で、COX-2選択的NSAIDはそれをそれほど抑制しません。
その結果、血液が凝固しやすくなり、血管が収縮しやすくなる可能性があります。
これにより、心筋梗塞や脳卒中のリスクが増えると考えられています。 - 高血圧:
NSAIDは腎臓でのプロスタグランジンの産生を抑制し、それによりナトリウムと水分の排泄が減少する可能性があります。
この結果、体内の水分とナトリウムが増え、血圧が上昇する可能性があります。
高血圧は心血管疾患の重要なリスク因子であるため、これが心血管イベントのリスクを増加させる可能性があります。 - 動脈硬化: NSAIDの長期使用は動脈硬化を促進する可能性があります。
これはプロスタグランジンのバランス変化や高血圧による血管壁への損傷が、動脈硬化を引き起こす炎症反応を引き起こす可能性があるからです。
動脈硬化は心血管疾患の主要な原因であり、これが心筋梗塞や脳卒中のリスクを増加させる可能性があります。
以上のように、NSAIDは炎症や痛みを抑える効果がある一方で、心血管イベントのリスクを増加させる可能性があります。
そのため、高血圧や心血管疾患の既往歴がある人は、NSAIDを使用する際には医師と十分な相談を行うことが重要です。
また、NSAIDは必要最小限の期間と用量で使用することが推奨されます。